2018-01-01から1年間の記事一覧

時間とはなにか−物理学による答え

松浦(2017)は、時間とは何かという深淵な問いに対して、物理学の発展の歴史を紐解きながらそれに対する回答を解説している。時間は、直感的に考えると、方向性をもって過去から未来へと流れるもののように思える。しかし、松浦によれば、そもそも時間をどの…

資本の回転による時間の変容と空間の再編

現代社会は資本主義社会である。そういうからには、この世界を動かしている主役は「資本」である。では、資本はいかなるメカニズムをもって、この世界を変えてきたのだろうか。この点に関して、熊野(2018)はマルクス資本論を解説しつつ、資本制においては、…

資本論の存在論・認識論

現代は資本主義の社会だと言われている。この社会には流通市場があり、商品があり、貨幣がある。そして、資本主義である以上、資本がある。しかし、私たちが物理的な存在に対して、川がある、石があるというのとは少し異なり、流通市場も、商品も、貨幣も、…

脳の探求システムが活性化されることで生き生きと働くようになる

職場で従業員が生き生きと働いていない、エンゲージメントが低いなど、悩みをかかえる個人や組織は多い。その原因は何かについて、Cable (2018)は、本来人間が進化の過程で身に着けた生物学的な脳の機能が活性化されていないからだと示唆する。心理学的とい…

意味のある仕事で毎日小さな前進を積み重ねることの重要性

アマビールとクレイマー(2017)は、私たちが働くうえで、クリエイティビティ、生産性の向上、コミットメントの増大、良い人間関係を生み出すために重要なのが、私たちの内面的な仕事経験(インナーワークライフ)を充実させることであるという。インナーワー…

すべての人が備える創造性を発火させる「イノベーション・エンジン」

シーリグ(2012)は、私たちの身のまわりのあらゆるものが創造性を発揮するチャンスになり、創造性があれば、たえず変化する世界を生き抜き、可能性を広げることができると主張する。創造性が高まれば、問題ではなく可能性だと捉え、障害ではなくチャンスだと…

地政学の考え方

地政学とは何か。佐藤(2016)は、「われわれの記録に残る人類の歴史がはじまってから、これで千年になる。が、この間に、地球上の重要な地形はほとんど変化していない」というマッキンダーの一文を紹介しつつ、時間を経ても変化しにくい地理的要因を基本に、…

自分自身の人生を切り拓くための「起業家的スキル」

シーリグ(2016)は、自分が「こうありたい」と思い描く未来にたどりつくためには、まず「起業家的心構え」が重要だと説く。起業家的態度とは、「チャンスは身のまわりにあふれていて、自分次第で運は拓ける」と考える態度である。必ずしも実際に会社を興すよ…

虚構を信じる力が人類社会の発展を可能にした

なぜ私たち人類はこの世の中にこれほどまでに高度に発達した社会システムを地球上に作り上げることができたのであろうか。これに関して、ハラリ(2018)は、私たち人類の祖先は数十人からなる小さな生活集団で何百万年も進化してきたので、大規模な協力のため…

闘うための哲学書案内

小川・萱野(2014)は、ものごとの本質を言葉をつかって批判的、根源的に探究していく学問である哲学について、22冊の古典を紹介しながら、混迷の時代を闘い抜く知を身に着けるヒントを提供しようとしている。いわば、人生を闘うための哲学書ガイドを提供し…

すでにあるリソースを最大限に活用して優れた成果を出す

ソネンシェイン(2014)は、私たちが持つリソースに制約があっても、「すでにあるもの」だけでもっと成果をあげ、もっと強い組織を築き、もっと仕事を楽しみ、もっと大きな幸福を手にできる考え方があるといい、それを「ストレッチ」という言葉で説明している…

「理性」で読む「西洋美術史」

木村(2017)は、いつも講演で「美術は見るものではなく読むもの」と伝えているという。つまり、美術は「感性」で見るものではなく、「理性」で読むものだというのである。美術史を振り返っても、西洋美術は伝統的に知性と理性に訴えることを是としてきたと木…

重力の正体は粒子や波なのか、それとも全く別のものか

ニュートンが万有引力の法則を発見したことにより、自然科学は劇的に発展した。しかしニュートンは、ただ万有引力があるといっただけで、なぜ離れた物体同士が引き合うのかについての理由を説明しなかった。したがって、古典力学においては、理由はわからな…

なぜ超弦理論では空間が9次元なのか

大栗(2013)は、素粒子理論の最先端でもある超弦理論(あるいは超ひも理論)を、その歴史的背景も含め、分かりやすく解説している。超弦理論は、物質をつくっているのは粒子ではなく、「ひも」のように拡がったものであると考える理論で、重力の働きによって…

入試現代文での小説文問題は客観的分析力を測定するためにある

出口(2014)は、文系理系を問わず受験生が受けるセンター試験のような試験においても現代文で小説が出題されるのは、なにも文学的センスを測定しているわけではなく、客観的分析力や思考力を測定しようとしていることを示唆する。むしろ小説文であるからこそ…

量子力学が示す世界像の本質

森田(2001)は、私たち自身を含めたこの世界のすべてが量子力学が扱う微小的な対象から成り立っていることを考えると、ミクロの世界の「真の姿」を理解することは、私たちが日常的に生活しているこの世界を、ひいては私たち自身を理解することにもつながるだ…

中国とは何か、中国人とは何か、中国語とは何か

岡田(2004)によれば、中国という言葉が現在のように国全体の呼称として使われだしたのは、19世紀末から20世紀初めの頃である。それ以前、例えば清の時代には、皇帝が君臨する範囲を呼ぶ呼称がなかったという。では、どのようないきさつで自分の国を中国と呼…

壮大な実験国家としてのソビエト連邦

1917年の革命から生まれ、1991年に崩壊した社会主義国家としてのソビエト連邦(ソ連)は、20世紀の歴史上に巨大な存在感を持っていると松戸(2011)は指摘する。 松戸によれば、ソ連は、啓蒙主義・社会主義・マルクス主義というヨーロッパ近代に生まれて発達し…

哲学とは何か、役に立つのか

中嶋(2001)は、哲学は、医学や法学のように技術としては何の役にも立たないという。しかし、哲学は、有用であること、社会に役立つこと以外の価値を教えてくれるという。そのような哲学とはいったい何なのか。役に立つとすれば何の役に立つのか。 中嶋によれ…

量子力学における多世界解釈とは何か

和田(1994)は、いわゆる物体の振る舞いと、それを構成している原子の振る舞いが想像以上にまったく異なる様相を示すことを指摘し、それゆえに量子力学という新しい物理学が誕生しなければならなかったのだという。量子力学によって原子の世界を表現するには…

数学という学問の本質

中村・室井(2014)によれば、「数学」は人間理性が作り上げた最も古くて、最も深く、最も純粋な学問である。ざっと5000年の歴史がある中で、時を超え、民族や言葉の違いも乗り越え、同一の真理を追究しつづけてきた学問であるともいえる。このような数学とい…

読解→鑑賞→批評の関係

高田(2014)は、文章表現を前にして、人間の心の動きは、読解―鑑賞―批評という順序をとるという。もちろん、読解は自然に鑑賞につながり、鑑賞は自然に批評につながるのでこの3者はしばしばあいまいな形で混在することも認めるのだが、あえて3つに区分して…

非競争戦略のメカニズム

山田(2015)は、業界のリーダー企業と戦うことなくビジネスを有利に進めることを可能にする「競争しない競争戦略」について体系的に解説している。山田によれば、競争することはメリットもあるが、お互いに消耗戦に陥るなどデメリットも多い。消耗戦になれば…

成功するビジネスモデルの鉄則

山田(2017)は、成功企業に潜むビジネスモデルについて解説するなかで、成功するビジネスモデルのツボとして「持続的なコスト優位」と「持続的に強い競争構造」の2つを挙げている。まず、持続的なコスト優位を築くためには、今かかっているコストをいかに下…