山田(2017)は、成功企業に潜むビジネスモデルについて解説するなかで、成功するビジネスモデルのツボとして「持続的なコスト優位」と「持続的に強い競争構造」の2つを挙げている。まず、持続的なコスト優位を築くためには、今かかっているコストをいかに下げるかではなく、どのようなところに自社で費用を投じ、どこには投じないかを決定し、最初から低コストで回る仕組みを構築することが重要だと説く。例えば、特定の活動を削るのではなく「やらない」。その活動を止めてしまうわけである。また、特定の活動を「顧客にやってもらう」。企業のコストの一部を顧客に転嫁するわけである。さらに、「仕組を変えてまったく違うコスト構造をつくる」ことで、競合よりも2割コストが安いという程度ではなく、10分の1のコストにするなどを実現して圧倒的なコスト優位を築くことである。固定費を変動化することで、収入が減っても倒産のリスクを防げぐ方法や、サンクコストになってしまった機会や設備を顧客のために稼働させることによってサンクコストを回収する方法もある。
一方、持続的に強い競争構造については、いわゆる伝統的な企業(レガシー企業、リーダー企業)との競争と、自社が構築したビジネスモデルと同じビジネスモデルの企業との競争を念頭に置くことが求められる。レガシー企業との競争においては、まず、レガシー企業の資産を負債化することが重要である。リーダー企業が蓄積してきた資産には、企業側に蓄積された「企業資産」と、ユーザー側に蓄積された「市場資産」があるが、これらの資産が大きければ大きいほど、それらの資産が足かせとなって、新しいビジネスモデルを仕掛けてきた企業に同質化できないことを利用するのである。次に、相手企業が持っていない機能の付加を通じてバリューチェーンの中に入り込む方法がある。同じビジネスモデルとの競争においては、先発者は、追随者が出現することを前提として、模倣されにくいビジネスモデルを構築することが求められるという。