大乗仏教は釈迦の仏教とどう違うのか

日本人にとっての仏教は、基本的に大乗仏教である。そして大乗仏教は、釈迦が開いた本来の仏教とはかなり性質が異なる新しい仏教だと言われている。仏教がインドから中国に伝わった際に、釈迦が開いたオリジナルな仏教と大乗仏教が一緒に流入したのだが、そ…

地政学で読み解く「第2次冷戦」

2022年2月24日にロシアが隣国ククライナに対する軍事侵攻に踏み切ったことをもって、この日は「第二次冷戦」が始まった日として歴史に刻まれるだろうと松元(2022)は論じる。この戦争によって、世界は今後、ロシア・中国を中心とする権威主義、専制主義の枢軸…

地政学とは何か

奥山(2020)は、地政学を「国際政治を冷酷に見る視点やアプローチ」としたうえで、国際政治を「劇」に例えるならば、地政学は「舞台装置」に例えることができるという。「劇」の裏側で、そのシステム全体の構造を決めているのは「舞台装置」であるから、国際…

世界システム論で紐解く現代史

川北(2016)によれば、世界システム論とは、近代世界を1つの巨大な生き物のように考え、近代の世界史をそうした有機体の展開過程としてとらえる見方である。つまり、世界の歴史について、ヨーロッパ中心史観を否定し、少なくとも16世紀以降は、ヨーロッパ…

時間と空間の現象学的理解

世界の根源的な存在とは何かと問われれば、まず思い浮かぶのが、時間と空間である。時間と空間が存在しているということは、世界が世界であることのもっとも基本的な要素であり、時間と空間なくしては世界はありえないし、時間と空間は人間が存在するしない…

現象学とは何か

私たちは、主観でしか世界を認識することはできない。自分の外側に飛び出して、自分を含む世界を「客観的に」眺めることなど不可能である。しかし、現在支配的な諸学問や諸科学は、後者の「あり得ない」客観性を前提としているものが多く、中でも、数学や論…

マルクスの思想が到達した「脱成長コミュニズム」とは何か

斎藤(2020)は、最晩年のマルクスが遺した手紙や読書メモなどをつなぎ合わせると、これまで指摘されてこなかった思想の大転換を晩年のマルクスが行っていたことが分かると論じる。どういうことかというと、マルクスは晩年になって、若かりし時代に盟友エンゲ…

現代思想家になる方法

千葉(2022)は、1960年代から1990年代を中心に、主にフランスで展開された「ポスト構造主義」を、とりわけジャック・デリダ、ジル・ドゥルーズ、ミシェル・フーコーの思想を中心に「現代思想」として紹介し、現代思想を、「秩序を強化する動きへの警戒心を持…

世界が純粋機械化経済に移行するとどうなるのか

井上(2019)は、有史時代となってから世界の経済は、農耕中心の経済の生産構造から、機械化経済の生産構造へと変化し、将来は、純粋機械化経済の生産構造へとシフトすることが予想されるという。このような経済の生産構造の変化は私達にどのような影響をもた…

「世界統合」vs「勢力均衡」で理解する世界史と未来の世界

長沼(2021)は、E.H.カーの「歴史とは、現在と過去との対話である」という言葉を引きながら、現代の私たちが未来をどう見るかで、どのように過去からのストーリーを決めるのだという。そのような視点から、長沼は、「未来はコンピューター化された経済力やメ…

文系理系を問わず量子力学を理解すべき理由

村上(2021)は、正解があるかどうか分からない課題に直面した時に正解にたどり着く方法や、未来を正しく見通す力を身に着けるには、日常感覚の世界を飛び越えたような発想やアイデアに導く比類なき思考が大切だといい、これを「クオンタム思考」と呼んでいる…

人生が変わる現代思想と精神分析

千葉(2022)は、現代思想を学ぶと、複雑なことを単純化しないで考えられるようになるという。単純化できない現実の難しさを、以前より高い解像度で捉えられるようになるというのである。その1つの例が、秩序と逸脱という二項対立の脱構築という考え方である…

生物は死があるおかげで進化し存在している

私たちにとって死は避けられない人生のイベントである。いつか必ず訪れる死は恐怖であるが逃れることはできない。では、なぜ私たちは死ななければならないのか。この素朴な質問への答えとして、小林(2021)は、進化が生物を作ったからであり、進化の過程で死…

FIREとSDGs, ESGとの関連性

近年注目を浴びているFIREとは、Financial Independence, Retire Eearlyの略で、経済的独立の確立による早期リタイアメントを目指すムーブメントである。山崎(2021)によれば、FIREを目指すことは、自分の人生を通じた経済的安全を確保するための取り組みであ…

インパクトのある仕事をするための編集思考

佐々木(2019)は、編集を「セレクト(選ぶ)」「コネクト(つなげる)」「プロモート(届ける)」「エンゲージ(深める)」の4つのステップによって、ヒト・モノ・コトの価値を高める行為だと整理し、すべてのビジネスパーソンが編集思考を身に着ければ、日…

人生の成功を左右する不確実性マネジメント

田渕(2016)によれば、不確実性とは、将来の出来事に予測できな性質が備わっていることであるが、不確実性との向き合い方が人生の長期的成功を決めるくらい決定的に重要であるにも関わらず、不確実性は驚くほどに理解されていないと指摘する。人はいつも予想…

物理学的思考法とは何か

橋本(2021)は、日常的な出来事に関する様々なエッセイをもとに、物理学者が繰り出す究極的な思考法を紹介している。そもそも物理学の研究対象は、広大は宇宙から極小の素粒子まで想像を絶する世界であり、物理学者はそういった浮世離れした対象のことを毎日…

逆境をチャンスに変える「EDGE」とは

世の中は必ずしも平等、公平ではない。ジェンダー、人種、宗教、価値観、その他、様々な特徴などによって、社会において常に不公平かつ不利な立場に置かれる場合は数多くある。これらの状況では、スタート地点に立った瞬間から他人から偏見の目で見られ、不…

イノベーションとは人々の行動が変容することである

内田(2022)は、イノベーションの本質とは、新しい製品・サービスを消費者や企業の日々の活動や行動の中に浸透させること、すなわち人々の行動を変容させることだという。であるから、単に新しいものを発明したり、技術革新によって新たな製品を作ることは、…

非線形性としてのサービス&ホスピタリティ

サービスやホスピタリティには、モノ的世界観に基づくものと、コト的世界観に基づくものがあると考えられる。モノ的世界観は工業化との繋がりが強い。工業化が世界経済を飛躍させ人々の生活を豊かにしたことは紛れもない事実であり、モノとしての製品を大量…

社会システムの全域化がもたらすヒューマニズムの危機

宮台・野田(2022)は、現代の社会が「安全・快適・便利」を追求してきた結果として、「汎システム化=社会システムの全域化」が進行しており、それが、伝統的な「生活世界」を侵食しているが故に、私たちは多くのものを失いつつあると論じる。そして日本をは…

価値獲得を基点にする利益イノベーション

川上(2021)は、企業には価値創造活動と価値獲得活動の両方によって持続的な存在が可能となるわけだが、企業の取り分を決める「価値獲得」から先に考えることによって利益イノベーションを生み出し、それによってさらに価値創造のイノベーションにもつなげて…

VUCA時代の問題発見法

細谷(2020)は、VUCAという言葉に代表される先の読めない時代に必要なのは「問題解決力」ではなく「問題発見力」だという。なぜならば、安定している時代にはある程度問題がわかっているので、その問題を解決する能力が重要だが、不確実性が上がれば上がるほ…

情報論的生命観とは何か

生命とは何かという深遠な問いに関して、私たちの多くは、非常に素朴な見方をしがちである。それは、生命をパーツの集合体として機械論的にとらえるものである。この考え方が浸透し、臓器などの「生命部品」は交換可能な一種のコモディティと考えられるよう…

民主主義とは異なる中国の統治システム

中国ではいまだ民主化が進んでいないという見方が大勢である。橋爪・大澤・宮台(2013)によれば、共産党一党支配下の中国は「社会主義市場経済」を標榜しており、民主主義市場経済ではない。また、宮台は、「中国が市場経済化と民主化を両立させることはでき…

中国にとって「漢字」とは何か

日本人の視点から「漢字」をみると、中国において中国人が生み出した文字というように単純に考えてしまいがちである。しかし、橋爪・大澤・宮台(2013)による鼎談によれば、中国は歴史的にみても現在においても多民族国家であり、民族間ではお互いに理解でき…

量子力学が導くより正確な世界理解ー世界は関係でできている

細分化され専門化された学問としての量子力学は、物体の運動を理解しようとする物理学の1分野にすぎない。しかし、そもそも科学のもとをたどれば「この世界とは何だろうか」を問う哲学や自然哲学から派生したものである。その意味において、量子力学は、微…

良い戦略とはどのようなものか

ルメルト(2012)によれば、戦略の基本は、相手の最大の弱みの部分に、こちらの最大の強みをぶつけることである。別の言い方をすれば、最も効果の上がりそうなところに最強の武器を投じることである。企業経営に即していうならば、他の組織はどこも持っていな…

こころの「拡がり理論」は新たな地平を開くか

こころとは何かについての問いは、深く考えると非常に難解である。そもそも「こころ」はどこにあるのか。例えば「こころは脳に宿る」「こころは脳の活動から生じる」と素朴に考えたとしても、いくら脳科学の発展によって脳のメカニズムが深く理解できるよう…

人間とAIとのコミュニケーションは成立するか

人工知能(AI)の発展は著しく、私たちの生活のあらゆる場面において活用されようとしている。そして現在でも、対人ではなくスマートフォンやタブレットに直接話しかけるという場面は、電話でも自動音声と対話することが増えている。これらの背後にはAIがい…