2021-01-01から1年間の記事一覧

民主主義とは異なる中国の統治システム

中国ではいまだ民主化が進んでいないという見方が大勢である。橋爪・大澤・宮台(2013)によれば、共産党一党支配下の中国は「社会主義市場経済」を標榜しており、民主主義市場経済ではない。また、宮台は、「中国が市場経済化と民主化を両立させることはでき…

中国にとって「漢字」とは何か

日本人の視点から「漢字」をみると、中国において中国人が生み出した文字というように単純に考えてしまいがちである。しかし、橋爪・大澤・宮台(2013)による鼎談によれば、中国は歴史的にみても現在においても多民族国家であり、民族間ではお互いに理解でき…

量子力学が導くより正確な世界理解ー世界は関係でできている

細分化され専門化された学問としての量子力学は、物体の運動を理解しようとする物理学の1分野にすぎない。しかし、そもそも科学のもとをたどれば「この世界とは何だろうか」を問う哲学や自然哲学から派生したものである。その意味において、量子力学は、微…

良い戦略とはどのようなものか

ルメルト(2012)によれば、戦略の基本は、相手の最大の弱みの部分に、こちらの最大の強みをぶつけることである。別の言い方をすれば、最も効果の上がりそうなところに最強の武器を投じることである。企業経営に即していうならば、他の組織はどこも持っていな…

こころの「拡がり理論」は新たな地平を開くか

こころとは何かについての問いは、深く考えると非常に難解である。そもそも「こころ」はどこにあるのか。例えば「こころは脳に宿る」「こころは脳の活動から生じる」と素朴に考えたとしても、いくら脳科学の発展によって脳のメカニズムが深く理解できるよう…

人間とAIとのコミュニケーションは成立するか

人工知能(AI)の発展は著しく、私たちの生活のあらゆる場面において活用されようとしている。そして現在でも、対人ではなくスマートフォンやタブレットに直接話しかけるという場面は、電話でも自動音声と対話することが増えている。これらの背後にはAIがい…

生命とは何か

ナース(2021)は、「生命とは何か」という大きくかつ根本的な問いに対して、 生物学における5つの考え方を階段を1段ずつ上るようなかたちで紹介し、この5つの考え方を新たなかたちで結びつけることによって、生命の仕組みについての、はっきりとして見通し…

デジタル社会の本質とミルフィーユ化する世界

西山(2021)は、デジタル化の進展でいま何か決定的な変化が起こりつつあると指摘し、デジタル化が全面化する時代に変容しつつあるのは、個々の企業の経営のあり方だけではなく、企業が活動する産業そのもの、消費者を含めて取引を行う市場そのものが、新しい…

会計×戦略思考の本質

大津(2021)は、「会計がわからなければ真の経営者にはなれない」という稲盛和夫氏の言葉を引用しつつ、会計の数値を企業活動と結び付けて考えることができる人ほど、会計を手段として使いこなすことができていると論じ、「会計✕戦略思考」というかたちで経営…

生物と機械はどう違うのか

近年のAI(人工知能)の発達に伴い、シンギュラリティ (技術的特異点)というコンセプトに言及されることが増えている。これは、ざっくりというと将来AIが人間の能力を超えるという予想を指すものであるが、この考え方の根底には、人間のような生物と、コン…

ドラッカー+デザイン思考+ポーター=戦略の創造学

山脇(2020)は、ドラッカーの著作と、デザイン思考と、そしてポーターの競争戦略論を組み合わせることで、 新しい企業モデルである「共感と未来を生む経営モデル」を提唱する。言い換えれば、ドラッカーで「気づき」、デザイン思考で「創造し」、目的達成のた…

情報化/消費化資本主義の臨界

見田(2017)は、20世紀後半から現在にかけては、「近代」という加速する高度成長期の最終局面であることを示唆するが、この最終の局面の拍車の実質を支えていたのが、1927年の歴史的な「GMの勝利」を範型とする「情報化/消費化資本主義」というメカニズムだ…

アンプロダクティブタイム(=何もしない時間)はなぜ大切か

長倉(2020)は、アンプロダクティブタイム(=何もしない時間)をどれだけ持つかが人生にとって非常に大事なのだと主張する。長倉によれば、アンプロダクティブタイムをたくさん生み出すために、プロダクティブタイムの質を高め、全力で時短を進めるべきなの…

「経験論」を基盤とする英米哲学の系譜

一ノ瀬(2016)は、英語圏の哲学的系譜すなわち英米哲学の諸潮流は「経験」を基盤に据えるという発想に導かれているとの視点から英米哲学史を概説している。一ノ瀬によれば、経験論における「経験的」とは、「努力し試みることの中において」という意味である…

デジタル革命がもたらすポスト人間社会

現代はデジタル革命が進行している。石田(2020)は、自身が構築を進める「新記号論」の立場から、デジタル革命が進むことにより、アナログ的な認識を担う意識的主体としての「人間」が、デジタルな記号を演算処理する計算論的主体である「ポスト人間」に席を…

カントはなぜ(純粋)理性を批判するのか

西(2020)は、カントの『純粋理性批判』を、哲学史上最も難解な著作のひとつであるが古今数多の哲学書の中でも五指に入る重要な著作だと指摘しつつも、そのエッセンスを分かりやすく説明しようと努めている。西によれば、カントの『純粋理性批判』は、人間が…

文化産業とリピドー経済がマルクス主義を敗北に追いやった

石田(2016)は、20世紀初めのマルクス主義者たちは、テイラーシステムを通した機械による人間の奴隷化やフォーディズムを通した労働者のプロレタリア化といった言説に代表されるように、労働と生産の体制についての優れた分析力によって、発達しつつあった…

資本論で読み解く「資本主義の暴力性」

斎藤(2021)は、世界中に豊かさをもたらすことを約束していた資本主義が私たちの生活や地球環境を急速に悪化させているといい、このまま資本主義に人類の未来を委ねて本当に大丈夫なのかという問題意識から、「資本主義の暴力性」に注目したかたちでマルクス…

誰でもリーダーシップを身に着けることができる王道とは

森岡(2020)は、リーダーシップの本質を「人を本気にさせる力」だと論じる。人々がワクワクするような未来の完成形を描き出し、それが絵空事ではなく本当に実現できそうだと信じさせる力、そしてその物語の中でその人ならではの特別な役割を演じられると相手…

時間は流れない、だが生命の中には時間の流れがある

橋元(2020)は、アインシュタインの相対性理論など現代物理学の知見から言えば、空間と時間は幻想だとし、かつ、時間は過去から現在、未来へと流れるものではないという。まず、相対性理論では、時間と空間は時空を構成する同一尺度(同じ単位)で捉える。ニ…

タテ社会のメカニズム

中根(2019)は、自身のロング&ベストセラー「タテ社会の人間関係」を振り返りつつ、前著の要点を簡潔に説明している。第一に、中根が主張する、日本にみられる機能集団構成の特色は、その人が持っている個々人の属性(資格)よりも、「場」(一定の個人が集…

現代思想はいかに世界を変革したか

石田(2010)は、現代思想の問いとは、私たち現代人の人間としての存在や、社会のあり方、文化や環境の成り立ちについて根本的な成立条件を問う試みだという。そのような根本的な問いは相互に結び付いて私たちの時代に固有な問題群として成立しているというの…