水平思考マーケティング

コトラーとベス(2004)は、既存の製品カテゴリーや市場のもとでマーケティングプロセスを垂直的に辿り、サイズ、パッケージング、デザインなど様々な要素を変更してイノベーションを実現する「バーティカルマーケティング」に対し、なんらかの改変をくわえないかぎり対象とならないようなニーズ、用途、状況、ターゲットを付加することでまったく新たな製品・サービスを生み出す手法として「ラテラル(水平思考)・マーケティング」を紹介している。


ラテラル・マーケティングは創造プロセスであり、新しい方向性を切り拓く手法である。連想や論理の飛躍が求められるゆえに難易度の高いプロセルでもある。また、消費者や顧客に受け入れてもらうための努力も必要になる。ただし、コトラーとベスは、ラテラル・マーケティングはしたがうべき一定の手順が確立されたプロセスであると説く。その基本となるのが3つのステップからなる創造的思考で、(1)フォーカスを選択し、(2)水平移動によりギャップを生み(刺激を誘発し)、(3)連結することによってギャップを埋めることだと言う。


分かりやすい例としては、まず「花」にフォーカスを当て、論理的飛躍のある水平移動として「いつまでも枯れることのない花」というギャップがあり刺激を生む思考をする。そしてそのギャップを埋めるために花とプラスチックを連結させ「造花」というコンセプトを得るということである。このプロセスでの水平移動(水平思考)は、論理的思考では決して生じないような刺激を生むわけであり、創造性のみならずユーモアとも関連する思考だという。


マーケティングの領域におけるフォーカスの対象としては「市場(ニーズ、ターゲット、用途/状況)」、「製品」、「その他のマーケティングミックス要素」がある。ギャップを生み出す技法には、代用する、逆転する、結合する、強調する、除去する、並び替える、という6つがある。