デザイン思考の方法論

奥出(2007)によれば、デザイン思考とは、創造性を経営に反映させる方法である。ここでいう創造性とは、つくりだしたプロダクトで人の心をつかまえる、人がそれを見て感動する、持っていて嬉しくなるといったことである。また、消費者を観察することでアイデアを見つけ、それを実行できるコンセプトをつくり、形を考え、メカニズムを降参して設計し、実装し、消費者に渡すまでの製品やサービスの流れを「デザインプロセス」と呼ぶ。経営、生産システム、あるいはサービスのあり方すべてにデザイン思考を適用していくのがデザイン戦略である。


奥出は、デザイン思考、デザイン戦略を支える創造の方法として、創造のプロセス設計が重要だと説く。このプロセスは、社会的背景や哲学的背景を踏まえたうえで哲学すなわち「問題意識」を考えるところから始めて、「具体的に何をつくりたいのか」「何を実現したいのか」というビジョンを決め、それをもってフィールドワークに行き、どのようなものをつくるかコンセプト/モデルをつくり、機能やインストラクションを検討しながら実際の設計デザインを行い、実証する。次にビジネスモデルを構築して、実際の運営方法を決定するといった一連のプロセスである。「つくりながら考える」というのも創造性の方法として重要なやり方である。


奥出は、創造の方法を実行するためにはある種の身体能力=プラクティスもしくは「お稽古」が必要だと主張する。これには、実際にフィールドつまり現場に行って物事を感じる能力である「経験の拡大」、商品やサービスのコンセプトを簡単につくってみてから考える、すなわち考えたらまずつくってみるという「プロトタイプ思考」、チームで「コラボレーション」する能力が含まれる。


さらに奥出は、デザイン戦略、創造性を評価する視点として、以下のような4つの領域と10個の指標を紹介している。

  1. 財務的イノベーション(以下の項目にイノベーションがあるか)
    1. ビジネスモデル(どのように利益をあげるかの方法)、ネットワークおよび他社との連携
  2. プロセスのイノベーション(以下の項目にイノベーションがあるか)
    1. 実現プロセス(付加価値をつけるプロセスを実行する仕組み)、コアプロセス(付加価値を生み出す仕組み)
  3. 商品やサービスのイノベーション(以下の項目にイノベーションがあるか)
    1. パフォーマンス(コアプロセスをデザインする方法)、プロダクトシステム(提供する仕組み)、サービス(プロダクトやサービスを超えた価値を提供できる仕組み)
  4. デリバリーのイノベーション(以下の項目にイノベーションがあるか)
    1. チャネル(商品あるいはサービスを市場に投入する方法)、ブランド(商品やサービスの魅力を顧客に伝達する手法)、顧客経験(顧客が商品やサービスを手にしたときに獲得する経験)