デザインコンサルタントの「破壊的思考」を身につける

ウィリアムス(2014)は、今の時代、「考えられないことを考えつく」「他の誰もしていないことをする方法を見つけ出す」ことが決定的に重要だという。あるいは、今ほど現状を打破するのにふさわしいときはないと。誰も想定していない、興奮するようなソリューションを次々に送り出してマーケットを何度も驚かせるような考え方。型破りな戦略を生み出し、競合他社が追いつこうと必死になるような考え方、顧客の予想をひっくり返し、業界を次の世代に進歩させるような考え方、こういった「破壊的思考法」が重要だというのである。


破壊的思考の多くは、デザインスクールで教えられているとウィリアムスはいう。デザイナーは伝統をくつがえし、普通のものを予想外のものに改めるよう教えこまれており、製品やサービスと将来的な顧客のあいだに、感情的なつながりを持たせようとするという。ウィリアムスによれば、ビジネススクールが教える分析力と、デザインスクールが教える顧客との感情的なつながりを合わせることによる「破壊的思考」は、以下のような段階的なプロセスとして理解できる。


1つ目は、「破壊的仮説を立てる」ことである。破壊的仮説とは、考え方を変えるため、あえて非合理に立てる仮説である。そのためには「何を破壊したいのか」(業界、分野など)をはっきりさせ、そこで「何が常識なのか」を理解し、その「常識」「既成概念」に対して、それを「逆転してみる」「否定してみる」「スケールをアップ・ダウンする」ような方法で、鮮やかで奇抜な破壊的仮説をつくっていく。


2つ目は、「マーケットに眠る破壊的チャンスを見つけ出す」ことである。破壊的仮説を実践可能なチャンスに変えるために、仮説から現実世界の文脈に目を向け、答えを知りたい質問や問いを導き、実地調査をする。そうして得られた情報収集や観察結果を整理し、ふるいにかけ、意味がある何かへと変換することによって「洞察」を得る。観察結果から何かの「解釈」を生み出し、予想していなかったパターンを発見するわけである。こういった洞察を利用し、破壊的仮説を「誰に対して、どのような利点で、どのようなすき間(ギャップ)を埋めるのか」という破壊的チャンスに変換していく。


3つ目は、「破壊的アイデアをいくつか生み出す」ことである。破壊的チャンスから、「使い物になるアイデア」を生み出すのである。破壊的チャンスで特定した「すき間」や「利点」に焦点を絞りアイデア出しをし、断片を混ぜあわせたり、利点を混ぜあわせる。そして、名前をつけ、明確で他人にわかりやすいアイデアにする。そして「それが何か(ラベル)、誰のためのものか(ユーザー)、どうして彼らが興味を持つか(利点)、どうやってその利点をもたらすか(方法)」を含めた1文の簡潔なメッセージにまとめ、説明してみる。


4つ目は、「アイデアを単一の破壊的ソリューションに仕上げる」ことである。破壊的アイデアにエンドユーザーを積極的に関わらせて、それを試してもらい、フィードバックを受けることによって、実用的なソリューションに変換していくことである。アイデアからおおざっぱな試作モデルである「プロトタイプ」をつくり、思考を具体的なものにする。アイデアに形を与えるわけである。最後に、5つ目として、「破壊的売り込みを行い、ステークホルダーから投資や賛同を得る」。聴衆の心をつかむ「ストーリー」を作り、プレゼンテーションを行う。破壊的な変化を取り入れなければいけないという「必要性」から、それを取り入れたいという「意欲」へと聴衆の意識を動かすわけである。