なぜ小中学校の勉強が大切なのか

子供の頃は、小中学校・高校で勉強することは、先生や学校から「与えられる」ものだから、何の疑いもなく、それを勉強しなければならないものとして取り組んでいることが多い。あるいは、受験という目標があるならば、合格するための勉強という意味づけもあるだろう。しかし大事なことは、小中学校で勉強する内容は、子供が学校社会を渡り歩くうえで必要な知識や技術なのではなく、まさに大人にとって必要な「処世術」のもっとも基本的な知識やスキルだと言えよう。だから、処世術を身につけ、より良く生活していくためには、大人であっても、小中高で学ぶ内容を深く理解することがとても役立つと考えられるのである。


小中学校で学ぶ内容は、大きく分ければ、国語や英語、算数や数学、歴史・地理・社会、理科・科学である。まず、賢く生きていくためには、世の中の仕組みを理解しておく必要がある。ここには2つの視点がある。1つ目は、世界や宇宙を動かしている機械的な仕組みを知るということである。人間もまた、その仕組みの一部として、自然法則にしたがって動いているのである。こういったことを勉強するのが、科学である。科学は、物理や化学や生物に分かれていく。2つ目は、人間が過去にどんなことをしてきたのかを知れば、それを教訓にして未来を賢く生きることが可能だということである。だから、歴史を勉強し、歴史の結果として出来上がった現代社会を理解することは役に立つのである。


とりわけ、世界や宇宙の機械的な仕組み、その動きを支配している法則性を理解するのに必要なのが、数量的理解である。だから、それを理解するために、算数や数学を勉強しておく必要がある。算数や数学が役に立つのはそれだけではない。そもそも、算数や数学は、思考の方法だから、より一般的に、考える力、賢く世渡りする力を身につけるためには算数や数学を勉強するのがよいのである。


同様に、算数や数学を勉強することは、論理的思考力を身につけることである。国語を勉強することもそれに近い。英語を勉強することは、それをグローバルなレベルで行うことができるようになることを意味する。つまり、論理的に考え、それを効果的に相手に伝える、プレゼンテーションするといった基本的なコミュニケーションスキルを勉強するのが国語や外国語だということだ。また、国語を勉強するなかで、過去の思想史に触れることができたり、優れた文学的作品に触れることができたり、単なる言語スキルの獲得を超えた副産物も大きいのである。


まとめると、賢くこの世を生きるために、世の中を動かしている仕組みや法則を理解するのに役立つのが「科学」、人間がこれまで辿ってきた道から教訓を得るのに役立つのが「歴史・社会」、そして、これらを学ぶために必要なツールとなるのが「算数・国語・英語」なのである。