数学から発想と思考を学ぶ

田中(2008)によれば、算数・数学は論理学である。つまり、数字と記号を使って、緻密に論理を展開する学問である。そして、東大の入試数学のような、どれほど高度に複雑な問題であっても、細かく分解していけば、ほとんど小学校で習うような基礎的な知識や数学的思考(知的元素)に分解できるという。難問は、教科書レベルの基礎的な数学的思考が複雑に絡まったものである。あくまで構成要素としては、基本的な知的元素なわけである。よって、難問を勉強することは、複雑な思考過程を理解する基本になる。


数学は論理学なので、証明なくしては成立しない。証明に用いた事柄も証明しなければならない。しかしそれだと永遠に終わらないので、証明しなくても無条件に使えると決めておくのが公理である。


数学は省略を好む学問でもある。よく使う問題について、思考プロセスを省略化したのが公式である。例えば、2次方程式の解の公式のようなもので、それを覚えれば即座に解は出るが、それには、解を導くための思考プロセスが省略されているのである。だから、公式そのものを丸暗記してしまうのではなく、なぜそのような公式が導かれるのかのプロセスを丁寧に理解しておくとよい。


数学における「定理」は、人類の学術資産である。過去の偉大な数学者が考え抜いて発見し、証明したもので、他の証明にも用いることができる重要なものである。すでに証明され、人類の学術資産として共有されているわけであるから、それについては、再度証明しなおす必要はなく、正しいものとして無条件に使ってもよいという、非常に便利な知識なのである。だからといって、自分は証明できないまま使ってもよいというわけではなく、証明の過程を追体験すれば、その思考プロセスと偉大な発見の成果に感動するだろう。