企画力の本質

仕事で活躍していくうえで「企画力」は欠かせない要素であるように思える。これに関して、「秋元康の仕事学」において秋元氏は、「企画とは自分の居場所を作ること」だという。オーバーにいえば「存在価値」だという。では、企画において一番大切なことは何か。秋元氏の主張の中からピックアップするならば、それは「どんな1日も無駄にしないこと」と「自分の色を持つこと」である。


どんな1日も無駄にしないこととはどういうことか。秋元氏によれば、企画の入り口というものは「気づくこと」から始まる。つまり、企画のネタというのは、特別なものを探しに行って見つけるものではなく、実は日常の中にある。秋元氏自身は、日常的にさまざまな気付きをリュックサックにどんどん入れて、必要なときに取り出すという作業を行っているという。重要なのは、リュックサックに入れるときや取り出すときに、その素材に対してどれだけ想像力を働かせて拡大できるかということで、そこに企画を生む秘訣があるという。


日常の中で気づきを見つけるには、常に好奇心を持っていることが重要だと秋元氏はいう。魅力的な人は「初めて」を作るのが上手である。日常の中から企画のネタとなる気づきを得るためには、意識的に「初めて」を作ればよいのである。「幸せ」に置き換えても同じことで、日常の中に幸せだなと思えるネタを多く見つけられるかが重要だというわけである。よって、企画を考えるにしても、幸せを見つけるにしても、一番大切なことは、「どんな1日も無駄にしない」ということなのだと秋元氏はいうのである。


次に、「自分の色を持つ」とはどういうことか。これは、何が面白いかと関連している。秋元氏によれば、人は、何かを見て脳に記憶するときに、無意識に「こういうものだ」という全体像を描こうとする。「だいたいこんなものだろう」と思い込む。これが「予定調和」なのであるが、実は、予定調和が裏切られたときに、人は面白いと思う。自分が見たことがないから、ハッとする。予定調和を壊すために、今まで普通だと思われてきたものを根本から疑い、結果的に、人々の心に響くものをつくっていくことが大切であると秋元氏はいう。予定調和を壊すということは、新しいことに挑戦するということである。


企画を立てていく上で一番重要なのは、「自分が正解だと思う」ことだと秋元氏はいう。これが「自分の色を持つ」ということである。自分勝手でわがままに生きることの大切さを、秋元氏は主張するのである。社会のルールさえきちんと守れているならば、人に嫌われようが、自分の生き方を貫くほうが魅力的である。新しいことをやろうとすれば必ず反対意見が出るものなので、嫌われる勇気を持たないと優れた企画は生まれない。そして、秋元氏は、根拠のない自信を持つことも重要だという。根拠のない自信を持っているというのは、生きるたくましさや生命力があるからである。


ちなみに、秋元氏は、仕事を進める際に、すべてを自分の思い通りに進めようとは思っていないという。設計や計画は机上の理論にすぎない。すべて計算通りにいくなんてことはありえないから、面白い。よって、見切り発車でもいいから、とにかく、どちらかにまずは走ってみる。それから臨機応変に軌道修正すればよいという。