人生を本質的要素だけに絞り込む

マキューン(2014)は、人生を本質的要素だけに絞り込むことで、最少の時間で成果を最大にするという「エッセンシャル思考」を紹介している。本当に重要なことに自分のエネルギーを集中することにより、重要なこと、正しいことに対してより遠く進むことができるというわけである。重要な少数は些末な多数に勝る。あるいは、大多数のものごとは不要である。よって、「より少なく、しかしより良く」しようとするのがポイントである。このようなエッセンシャル思考を構成するのが「見極める」「捨てる」「仕組化する」の3つの技術だとマキューンはいう。この3つの技術を一言でいえば「正しく減らす技術」となる。不必要なものを減らすことで本質的なものに集中し、仕事を減らすことで成果を増やすということである。


まず、より重要なこと、大切なこと、正しいことを「見極める」ためには、集中して考える時間が必要である。深い孤独の時間など、集中せざるをえない状況に自分を置き、考えるためのスペースを作ることが大切である。そして、幅広い選択肢を慎重に検討したうえで、「これだけは」ということだけを実行するのである。そのためには、情報の本質をつかみとる洞察力や、大局を見る視点が必要である。遊びを取り入れることも重要だとマキューンはいう。「遊び」は、本質を探究するのに役立つだけでなく、それ自体がどこまでも本質的だというのである。


次に、多数の些末なことを容赦なく切り捨てる技術が必要であるという。最終形を明確にし、ひとつの目標を、立ち止まらずに追いかけることである。そのためには、具体的かつ刺激的な「本質目標」を設定することが欠かせない。本質を見据えて生きることを選ぶのであれば、多数の些末なことは断固として断る勇気や技術も必要だというわけである。つまり、上手に「ノー」という、上手に「手放す」テクニックである。そもそも、なぜ「捨てる」ことが非常に重要なのか。それは、「余剰を削ることで本質が取り出せる」からである。要らないものを削れば、本質がはっきりと姿を現すというわけである。そのための技術として「編集」がある。本質をとりだす編集の四原則は、「削除する」「凝縮する」「修正する」「抑制する」である。


そして、やるべきことが決まれば、あとはそれを無意識に実行できるようにするのが大切であるとマキューンはいう。つまり、そうする仕組みを日常に組み込んでしまえば、何の苦労もなくスムーズに正しい行動ができるようになるというわけである。そのためには、仕事を減らし、バッファを作り、小さな一歩を積み重ねる仕組みをつくり、本質的な行動を習慣化することである。ただし、常に「今、何が重要か」を意識し、「今この瞬間」に、もっとも重要なことに集中するという意識も必要だとマキューンは論じる。


このようなエッセンシャル思考を自分の中心に据え、心の底まで染み込ませることによって、本質を知り、本質を生きることにつながる。そして、よりシンプルな人生となり、より幸福な人生となるのだとマキューンはいうのである。