「グローバル人財」になるための方法

原田(2013)は、自身が定義する「グローバル人財」になる能力は、日本人ならば誰しもが持っているもので、それを端的にいえば、わが国は島国なので情報が乏しいながらもその少ない情報をベースに自分の頭の中で「今起きていること」の原因を考え、「これから起きること」について大胆に考える能力を指すという。そして、グローバルなビジネスの現場で最大の収益を上げていくために何よりも必要なのは、グローバル・マクロ(国際的な資金循環)の中で「風」を感じ取る能力であるともいう。海外ビジネスを展開する場合、マネーが湧き出ているところをピンポイントで目指さないと何の意味もないからである。


原田は、この能力を磨く方法の1つとして「情報リテラシー」の強化を挙げている。これは何も留学しなくてもインターネットにつながったPCが1台あれば日本にいたままで鍛えることができる。例えば、誰でも入手できるインターネット上の公開情報を使って、グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と、それを取り巻く国内外情勢の今とこれからについて、自分の頭で考えてみる。公開情報を分析する際に最も重要なのが「定点観測」と「比較」である。注目すべきは、全体と比較して余りにも突出した記事(情報)であり、そうした記事こそが、世間を揺るがし、やがては物事を動かしていくことが多いからである。


公開情報を読み解くためには、例えばグローバル化が進み国境がなくなっているマーケットで縦横無尽に活躍しているアメリカや欧州の企業たち(越境する投資主体・事業主体)にある、ある一定の行動パターンの理解が重要となってくる。それのみならず、近現代史から始まり、時には古代に至るまでの様々な歴史を深く学ぶ必要があり、マーケットだからといって経済だけでなく、人文科学から自然科学まで幅広く知識を身につけていく必要があるという。原田はこれを「グローバル・リベラル・アーツ」と呼んでいる。


また、日本で求められているグローバル人財というのは、「グローバル」と「ドメスティック」の間をつなぐ人財だとしたうえで、そのような人財になる秘訣として、外国人である相手方を徹底的に知りたいと思う心を持ち、相手方が置かれた文脈を知ることが大切だという。さらに、非言語的なコミュニケーションを意識的に学ぶべきだもという。そして、それぞれの国にあるそれぞれの言葉でのユーモアを覚え、聞いている相手が思わず「プッ」と噴き出してしまうようなユーモアを使い、現地の同僚やパートナーたちと日常的に接する頻度を上げていくことが大切だと原田はいう。