戦略とは勝利につながる指標を選ぶことである

鈴木(2012)は、大東亜戦争時に日本軍が得た太平洋における勝利の7割は無意味であったことを引き合いに出し、戦略での失敗は戦術では補えないと主張する。当時の日本は、前半は快進撃を続けていたにもかかわらず、それらの多くは、大局的な戦略を持っていなかったがゆえの「目標達成につながらない勝利」だったというのである。逆に米軍は目標達成につながる勝利だけをつかみ取ることで戦局を逆転していったという。そのことから、目標達成につながる勝利を選ぶことが戦略なのだということを導いている。戦術で個別に勝利を重ねても、戦略が間違っていれば最終的な勝利には結び付かないのである。


また鈴木は「戦略決定とは追いかける指標を決めること」だと主張する。つまり、戦略は「追いかける指標」のことをいうのである。勝利につながる指標をいかに選ぶかが戦略ということになる。そして「新しい指標を発見すること」は「戦略そのものを発見すること」だという。特に閉塞感がある中では、ゲームのルールを根本から変えるような戦略が必要になってくる。これは「創造的破壊」であり「イノベーション」である。


鈴木によれば、イノベーションを創造するステップとしては、1)戦場の勝敗を支配している「既存の指標」を発見する。2)敵が使いこなしている指標を「無効化」する。3)支配的だった指標を凌駕する「新たな指標」で戦う、となる。同じ指標を追いかける(同じ戦略を用いる)だけではいつか敗北する。よって、支配的な指標を差し替えられる「新しい指標」で戦うこと(イノベーション)をしなければならないというのである。