無から有を生み出すイノベーション思考法

大前(2016)は、これからは「無から有を生み出すイノベーション」を実現することで1個人が世界を変える時代だとし、そのための発想力はトレーニングによって培うことができると説く。具体的には、基礎データを自分自身で時間をかけて集め、類似例を分析して現状を把握した上で、事実を積み上げて論理を構成すること、そしてさらに、その論理から自分の想像力を駆使して発想を飛躍させることを、トレーニングを繰り返して身に付けるわけである。


大前は、無から有を生み出すイノベーションを可能にする11の考え方を紹介している。例えば、ユーザー側に立った視点で、戦略を立案する方向性の数を増やす「戦略的自由度」を紹介している。「ユーザーが求めているものは何か」「私たちはそれを十分に提供しているか」「ユーザーが満足していない部分の原因は何か」「それを解決するためにはどういう方法があるか」というような問いを順番に発し、正しい問題と目標の設定をした上で、ユーザーの目的(目的関数)を満たすアイデアをたくさん挙げるわけである。


その他にも大前は、以下のような発想法を紹介し、無から有すなわち「0から1」を目指し、その次は「1から100」を目指すよう鼓舞する。

  • 情報格差」をビジネスチャンスにつなげる
  • 「組み合わせ」で新たな価値を創造する
  • 稼働率の向上」と「付加価値」を両立する
  • すでに(世界のどこかに)存在している「兆し(=ヒント)」をキャッチし、来たるべき未来を想像する
  • 空いているものを有効利用する
  • AとBがあり、どちらも行き詰まっているときに、その中間に活路を見出す(東京と新横浜の間に品川駅を設置する)
  • 「もしあなたが○○だったら」という他人の立場にたつ発想をする
  • すべてが意味することは何かを問うことで、森全体を見る視点に発想を飛躍させる
  • 見えないものを見る力である「構想力」を磨く