ラテラル(水平)思考のテクニック

これからの時代は、他人には思いつかない斬新な発想の価値が高く、現状からの「意味のある飛躍」をもたらすクリエイティビティが必要になってくる。そのような思考の一翼を担うのが、酒井(2010)も提唱する「ラテラル・シンキング(水平思考)」である。酒井によれば、ロジカル・シンキングが縦方向に物事を掘り下げるのに対し、ラテラル・シンキングは、横方向の思考によって斬新で意味のある飛躍を生み出そうとする。ロジカル・シンキングが、設定された枠の中で問題解決を探るのに対し、ラテラル・シンキングは既成の枠にとらわれず、視点をさまざまに変えて問題解決を図ろうとする。


酒井は、ラテラル・シンキングを支える3つの代表的な発想法を紹介している。1つ目は「アブダクション」であり、これは、驚くべき事実が観察されたときに、それを説明できる論理や仮説を作っていく方法である。2つ目はシネクティクス(類推法)であり、異質なものを結び付ける発想法である。たとえば、よく似ているものを見つけ出してきてテーマに結びつける「直接類推法」(例、カモノハシのくちばしから新幹線の頭部のデザインのヒントを得る)、擬人法や演劇的なアプローチで、対象に気持ちになりきってみる「主観類推法」(○○だったらどう考えるだろうか)、対象となるテーマを抽象化することで類似の事象を見つけ出す「象徴類推法」がある。3つ目は、TRIZ(トゥリーズ)と呼ばれる「発明的な問題解決理論」で、40種類の発明原理が提唱されている。酒井が紹介するTRIZの中のトップ8は、以下のとおりである。

1. 分割(これ以上分割しても仕方のないものをさらに分割してみる。壊れやすい部品をさらに分割することでメンテナンスしやすくする発想を得るなど)
2. 先取り作用(一連のプロセスの中で、途中にあるものを最前列に持ってくる)
3. 逆転の発想(人が動くのではなく階段が動くエスカレータ。自動墨すり機は、墨ではなく硯のほうが動くようになっている)
4. 動きを取り込む(本来「動くべきではない」ものを動かしてみる。回転ずしなど)
5. 周期的作用(連続している作業を、周期的な作業として捉えなおす。首ふり機能をもったクーラーなど)
6. ピンチをチャンスに(有害物質や作用を逆に何かの便宜に利用する。本来嫌われるサビを進行させることでできたカイロなど)
7. セルフサービス(システムがそれ自体で機能を実施したり、自己組織化したりすることをめざす)
8. パラメータの変更(物体の物理的状態を変更したり、柔軟性、温度、圧力などを通常の状態から変更してみる。細菌感染を防ぐために患者の体温を下げて手術を行う、子供から老人にパラメータを変えて認知症予防の教材を販売する公文教育研究会など)