創造性を高める5つのテクニック

ゴールデンバーグとボイド(2014)は、創造性を高めるために「既存の枠をはみ出せ」と訴えかける「アウトサイドボックス思考法」は、あまりに多すぎるアイデアが無秩序を生み、革新的な思考を妨げると指摘する。逆に、閉じた世界もしくは「制約条件(インサイドボックス)」の中でとことん考えるほうが創造的になれると説く。そして、インサイドボックスの中で問題の解決策を見つけ出す5つのテクニックを紹介する。その5つのテクニックとは、「引き算」「分割」「掛け算」「一石二鳥」「関数」である。


「引き算」とは、既存の製品やサービスからなんらかの要素を取り除くことである。旅客航空サービスからさまざまな機内サービスを引き算して生まれたのが格安航空会社、ステレオからスピーカーや録音機能を省いたウォークマンスマートフォンiPhoneから通話機能を削除したiPod Touch、従来のブログから字数を制限したツイッターなどがその例である。ポイントは、削除した要素を他の要素で代替するようにすることだとゴールデンバーグとボイドは説明する。


「分割」とは、既存の構成要素を分割し、一部を分離して用いるようにするものである。テレビの選局機能を分離したリモコン、重りと持ち手を分離したダンベル、PCの小容量の記憶装置を分離したUSBメモリ、交友関係を分割して管理可能にしたフェイスブックなどがその例である。分割の方法としては「機能的分割」「物理的分割」「機能を維持してミニチュア版にする分割」の3つがあるとゴールデンバーグとボイドはいう。


「掛け算」とは、製品やサービスの一部の要素をコピーして増量するものである。子供の自転車の補助輪、剃刀の刃を複数にして違う機能を持たせたジレットの使い捨て二枚刃剃刀、遠近両用めがね、両面テープ、給水管の数を増やして渦巻状の水流を作り出した水洗便器などがその例である。ポイントは、ある要素を増やした後に、オリジナルと異なる性質を持たせることだとゴールデンバーグとボイドはいう。一見常識に反した形から製品が発展して新たなメリットが生まれるというわけである。


「一石二鳥」とは、製品やサービスの1つの要素に複数の機能(多くの場合、互いに無関係と思われていた機能)をもたせることである。化粧品の乳液や保湿クリームに日焼け止め効果を持たせたもの、ユーザーの走りのデータ測定を市場調査データとして生かす「ナイキ+」のがその例である。ゴールデンバーグとボイドは、一石二鳥の実例としてアウトソーシング(例えば、開発は社外に任せて提供窓口のみ一本化したiPhoneアプリ)、既存の内部資源の活用(例えば、ミュージカル劇で俳優に楽器演奏者を兼任させる)、内部の要素に外部の要素の役割を担わせるなどを紹介する。


「関数」とは、それまで無関係と思われていた複数の要素を連動させることで革新的な製品やサービスを生む方法である。例えば、温度によって色が変わる「赤ちゃんを火傷させない哺乳瓶」がその例である。ポイントは、互いに関係のない2つの要素の一方の変化に合わせて、他方の性質が変わるようにすることで新たな価値を生むことだとゴールデンバーグとボイドはいう。


最後に、ゴールデンバーグとボイドは、これらの「インサイドボックス思考法」を使いこなすには、目新しいアイデアに注意を払う、欠かさずイメージトレーニングをするなど、練習あるのみだという。