プロの資料作成力の基本は「おもてなしの心」

清水(2012)は、「わかりやすい」「相手に伝わる」資料を作成するためには、「情報の量と質が適切で脳に収めやすい」という種類のわかりやすさを生み出すベーシックなスキル以外に、「論理的にも感情的にも受け入れやすい」という「腑に落ちる」状態を作り出すことが大切だと指摘する。これには、資料を読む(あるいはプレゼンテーションを聴く)相手のことを慮る、そうすることで相手の嗜好や状況に合わせた資料が作るという「おもてなしの心」が必要だとという。すなわち「どれだけ相手の立場にたてるか」がポイントであり、そういったセンスを磨くことが肝要である。これが、プロが資料作成において持つべきマインドである。


清水によれば、「わかる」「伝わる」資料作成のステップは、「何のために(目的)」「誰に(ターゲット)」「何を(メッセージ)」「どうやって(構成・ビジュアル化)」の4つである。とりわけ最初の3つが、相手にふさわしい資料を作るために「おもてなしの心」を駆使して考える部分であり、最後の1つが、どう作るかという「テクニック」の部分である。したがって、1,2,3を確立させる前に4の「テクニック」に走ってしまってはいけないのである。


最初の「目的」については3段階に分けられると清水はいう。1つ目は「どんな行動をとってもらいたいのか」、2つ目は「そのために何を理解してもらいたいのか」、3つ目は「そのためにどのような状態にするべきか」である。例えば「1.自分の企画を承認してもらい、社内できちんと通すまでサポートしてほしい」「2.改善のためにまず現状をしってほしい、提案の論理を理解し納得てほしい」「3.読み終わった後、この社内提案の強力なサポーターになっているような状態にする」というように目的を設定する。書かれてある内容の意義を理解してもらい、実際の行動を促すためには、明確な目的が必須である。目的の見えない資料では人は動かせないと清水は主張する。


次の「ターゲット」については、ターゲットを知るために「ターゲットプロファイル」という作業を紹介している。ターゲットプロファイルとは「特定の人物の行動履歴を心理的な側面から分析し、行動特性を明らかにする」というものである。具体的には、ターゲットとなる相手の「人物像」やその人が保有する「情報」を分析することで、相手の「期待」や「理解」のレベルを明らかにし、それをふまえたうえで「何をどのように伝えると最も効果的か=仮説」を構築する。


3番目の「メッセージ」については、「メッセージ=主張×根拠」「Aだから(根拠)、Bすべきである(主張)」を理解することが大切だと清水はいう。そこには「ロジックエラーがない」「相手の(何故?)に耐えうる」「感情に染み入る」「前面に感情を出さない」という条件が満たされているのが望ましいという。