自分プロジェクトを持とう

松浦(2012)は、大人の顔で生きることに慣れると、毎日はただの繰り返しになってしまうと言う。「だいたい、こんなものだろう」という暮らしを毎日していたら、心が固まってしまう。自分が何を目的としているかを見失い、何も考えず、流されながら暮らしていくのはさびしいものだという。松浦は、「目に見えない部分を初々しく保つ」ことが新鮮に生きていく方法だという。「成長しなくてもいいけれど、いつも新しくありたい」。それは、子供のままの好奇心のかたまりを、大人になっても、ずっと持ち続けるであり、それは「大人の楽しみ」であり「生きていく目的」でさえあるというのである。


松浦はそうするためのヒントをいろいろと紹介しているが、その中のひとつが「自分プロジェクトを持つ」というものである。ほんのささやかなものでも、ごく小さなものでも、「うれしさ」がたくさんある1日がいい。自分プロジェクトは、そのための方法である。


仕事でもいいし、毎日の暮らしのなかの些細なことでもいい。「これができたら、すてきだろうな。面白いだろうな。きっと新しい発見があるだろうな」という小さなプロジェクトをいくつかこしらえ、あれこれやり方を工夫し、夢中になって挑戦し、順番にクリアしていくことなのだという。松浦自身の自分プロジェクトの例が「おいしいハーブティーを淹れること」や「ギターを弾くこと」である。自分で問題を見つけ、答えを考える「独学」といってもよいという。そこには必ず工夫と発見がある。失敗を重ねつつ、試行錯誤を繰り返していく過程で、人生の醍醐味が味わえるという。


できるだけたくさんの自分プロジェクトを考え、それをメモして目のつくところに置いておくとよいと松浦はいう。慣れてきたら、暮らしの工夫や趣味ばかりでなく、仕事や人間関係にも自分プロジェクトをつくっていくと、やがては、自分の生き方を自分の手でコントロールできるようになるのだという。