森(2006)は、若い人たちに対して「どのような時代にあっても細い竹のようにしなやかに、踏みつけられても頭をもたげる雑草のようにしぶとく働き、生きていってほしい」とエールを送る。森は、「しなやか×しぶとさ=したたか」であることが大切な生き方の一つだという。人は、ともあれ生き延びなければならないのである。どうなろうとぼくは、わたしは生き延びると覚悟してその力を養っていくことが大切だという。
ただし、森は、ゆったり働くことも大切だという。これも、人間が人間らしくあるために必要なことである。森は、ゆったりと暮らすための「ゆとりの四原則」を紹介している。それは「緩、素、笑、悠」だという。「緩」はゆるやかである。ゆるやかに、ゆとりを持って働く。「素」は「もと」という意味で、基本が大切だということである。「笑」は「わらい」である。笑いは人を元気にする。時には、辛いことすら「笑い飛ばす」。「悠」は「とおい、ひさしい」とともに「ゆったりと」という意味である。ゆったりと落ち着いて仕事をしていく。
また、現実を受け入れることが、その人の生涯を豊かにするとも森は言う。厳しい現実に直面していたとしても、その現実を受け入れた上でいかに働くか、暮らすかを工夫し、努力するわけである。理想と現実があまりに乖離していても、その現実をまずは受け入れる。けれども、夢をあきらめる必要はないと森は言う。生活を支える方法を考え、暮らしが立つようにして芸なり技術なりを鍛える。一点突破で仕事のプロ、専門家になる努力をするのである。つまり、現実をしっかりと受け入れ、しかしそこに甘えないで一芸を身につけて機会をねらうということである。