ビジネスパーソンの「7つ道具+1」

フェルドマン(2012)は、働く人々に必要なのは「7つ道具+1」だという。7つ道具とは、「分析力」「プレゼン力」「人間力」「数字力」「時間・エネルギー管理力」「言語力」「商売力」であり、これらは掛け算で考えなければならない。そして、これらの7つ道具をうまく組み合わせる「結合力」が「+1}の要素である。これはもともとアナリストに必要なスキルとして提唱したが、情報が溢れ、ものすごいスピードで世界が動いているいまの時代、冷静に、客観的に物事を分析し、人に伝えるアナリスト的スキルは、どんな仕事にも共通して必要だという認識に基づいているとフェルドマンはいう。


例えば、分析力は、中身を見抜く力だという。混沌から、情報から、意味を引き出す力といってよい。よって、情報量でなはく、情報の「つなぎ方」が分析力のポイントとなる。それには、数字とモデルで考えるスタイルが含まれる。そして、「ストーリー(物語)」で考えるというスタイルもあると指摘する。ストーリーは大局を分析するうえでとりわけ有効だというわけである。フェルドマンは、ストーリーの変わり目を読むのがアナリストとしての自分の仕事であったといい「いつストーリーが変わるのか」「新しいストーリーは何か」を聞かれることが多かったという。


そこで、クリストファー・ブッカーの「The Seven Basic Plots: Why We Tell Stories」という本にある、7つのストーリーの分類を紹介している。それは「怪獣退治」「悲劇」「再生物語」「喜劇」「冒険」「放浪と帰還」「立志伝」である。ストーリーを読みとることは、どんな仕事においても大切なのだと説く。


プレゼンテーション力(伝える力)については、難しい言葉を使うよりわかりやすい言葉を使うべきだという。簡単なメッセージほど伝わりやすい。正確な比喩を使うことも大切だという。そして、意識してゆっくり話す。また、話を印象深くするために、キング牧師の演説のように繰り返し同じ内容を訴える「並列構造」を使うのも効果的だという。スピーチで大切なのは「聞き手の共感を得る」ことだということもポイントである。


商売力としては、自分のブランドを理解することの重要性もフェルドマンは説いている。つまり、自分ブランドを確立するのである。自分の「売り」となるスキルを持ち、それを強調することである。とりわけ、「そのジャンルでは自分が一番」と言えることが大切だという。「一番」がどれほど強いインパクトを持っているかは周知のとおりである。