挫折力を高めて一流になる

冨山(2011)は、人をもっとも成長させるのは「挫折」であるという。挫折を経験するのは、自分の能力以上のことに挑戦する(成長しようとする)からであり、それが「のびしろ」を作る。挫折を経験することによって挫折力を身につければ、それは壁をぶち破る力となると説く。挫折力というのは、「打たれ強い」「過去をリセットできる」「敗因を分析し、次の戦いに活かせる」「自分という人間が良くわかる」という力である。今後予想される世界のように、乱世の世界で活躍できるのは、根性が据わり、打たれ強く、腹をくくれる人物なのである。


たとえば、弱小集団のリーダーとして、ダメな上司や部下に囲まれた社員として、何度も修羅場や挫折を経験すると、権力、責任、人間関係の本質が見えてくる。組織が危機に陥るときにこそ、深刻な軋轢や紛争が生じ、人間関係が泥沼化する。普段はきれい事を言っている人が汚い行動をしたり、味方だと思っていた人が手のひらを返したりということが起こる。また、権力によって叩かれることで、権力の可能性と危険性や弱者の悲哀を実感することができる。そのような挫折を通じて、本当に大切にすべき人の見極め方、権力の正しい使い方、自分の身の守り方など、生きていくうえでの知恵と、本当の仲間と、自由な人生を与えてくれるのだと冨山はいう。


また、これからの時代は、挫折経験のある人のほうが有利であるともいう。挫折がその人の経歴を飾ってくれるのである。まず、挫折経験があるほうが、面白い人生を生きているといえるし、聞き手をハッとさせるエピソードやストーリーを語ることができる。挫折を経験し、それを乗り越えていくことによって一つのドラマが生まれるのである。チャンスは、挫折のドラマを持っている人のところにやってくると冨山はいうのである。よって、現在わが国も不遇な時代であるといわれて久しいが、この不遇と閉塞の中で、せいぜい苦しみ、失敗し、逼塞して、心と体を鍛えておくことだという。そして新たな展開が始まったときに、そうやって培った「挫折力」が必ず生きるはずだというのである。