機会を捉えるキャリア・バージョンアップ法

工業化社会における工業製品の場合、製品はできるだけ完成度を高めたうえで万全を期して市場に出すことだろう。それに対して、変化のスピードが速いIT業界などの世界では、80%くらいの完成度でもスピードを重視して市場に出し、ユーザーの反応など、機会を見てバージョンアップしていくという方法がとられることが多い。


石倉(2011)は、このような「バージョンアップ」の考え方を、個人のキャリアを語る上で用いている。新たな仕事、あらたなキャリアを築こうとするさい、自分のプロフィールは常に進化させるものであることを念頭に置くべきだという。完璧な準備ができていないのに新しい分野に踏み込んだりするのはよくない、という考えではなく、チャンスがめぐってきたと思ったら、スピードを重視してまずやってみる。はじめから完璧を目指すのではなく、ある程度できてきたら、それを世に問い、いろいろなコメントやクレームをきいて、さらによくしていこうとするのである。


したがって、機会を見て常に自分自身をバージョンアップさせることが、これからのキャリアにとって重要なことだと石倉はいうのである。だいたいこれでよさそうという80%くらいのところで行動し、状況は反応、効果を見ながら、どんどん改善していく、修正していくというアプローチである。「考えてから走る」のではなく「走りながら考える」というものに近い。


次々とバージョンアップさせていく自らのキャリアは、常にオープンな視点で幅広い機会を考慮し、一見するとトレードオフと思われるような2つの要素をうまく組み合わせることによって、ほかの人とは違う「ユニーク」なものを築き上げること、それが大切だと石倉はいう。