考えながら走るキャリア術

秋山(2013)は、事業開発という職業軸を維持しつつ、失敗を重ね、悩み、不安に襲われながら、時に行き当たりばったりで、紆余曲折の上、常に年収1千万円をキープしつつキャリア継続してきたという。このような、常に考えアクションをする「走りながら考える」経験から、日本でも海外でも、企業内で昇進を目指す場合でも、転職でも、独立でも、どこでも通用する力の身に着け方について紹介している。これは、社内で生き残るだけでなく、社外に出たときにどう生きていくのか、キャリアを進化させていく方法である。


秋山はまず「選択肢を生み出す力」の重要性を説く。選択肢を生み出す力を持っていれば、社内で生き残ることはもちろん、「会社を出たい」と思った時に転職できるという。これは、社内政治をはじめとする会社の中で生き残るテクニックや、狙ったポジションを手に入れ、社内外で評価される方法である。そこでまず大切なのは、どの業界のどの会社で、どのようなキャリアを選択すれば、人材市場において生き残る確率が高くなるかを認識しておくことであると秋山はいう。つまり、生き延びやすいキャリアを選ぶことである。自分のキャリアに疑問を持った時はいったん会社の「ベルトコンベア」から降りてみる。シンクタンクなどが出している「未来予測」を読んで、将来成長する可能性がある業界を探すという手もあるという。


また、社内政治は必要悪と割り切り、自分の安定を得るために最低限の対処法を身に着けることを秋山は勧める。その際の秘訣は、他部門で起きていることを知るなどの情報通であること、なんでもできる人であると思われないような情報発信の技術である。そして、狙ったポジションを手に入れるために、競争相手を減らすこと、自分にしかできない価値を高めていくことに力を注ぐことなども勧める。自分のスキルが外でも使えるかどうかを知るための工夫をすることも重要だと説く。


次に秋山は、「成果の出る勉強力」を紹介する。とくに「稼げて」「進歩が感じられる目標」さえ設定できれば、モチベーションをもって勉強に取り組めるという。一日以内に達成できる小さな目標を設定したり、挫折する可能性がある場合には自分に甘いくらいの目標設定で確実に勉強するなどの工夫も紹介している。お金を生み出すための勉強をし、必要ないものは切ることも実利的には重要であることを示唆する。


また秋山は、落ち込むことは辛いことがあっても、そこからの学びをエッセンスとして抽出し、感情的に落ちている状態からいち早く浮上する「危機からリカバる力」についても紹介する。重要なのは、致命的な不調になる前に手を打つために、プチ不調の予兆を感じることであるという。自分が陥りやすい思考回路や行動パターンが分かっていれば「最近ちょっとまずいかも」と気づくことができる。そして予め、緊急事態から浮上するための、救急セットを用意しておく。落ちるレベルによって何パターンか用意しておくのがポイントだという。


さらに、結果が出せる現場力についても説明している。ポイントは、抱え込むことからの卒業である。仕事を手放すためには、アウトプットイメージをクリアにする、そのためにもマニュアル作りをするなどの工夫を紹介している。「オフィスアワー」と「ぶらぶらマネジメント」も有効だと説く。そして、会社にうまく潜り込む技術、社内で人材として買われる技術として「未来を創る進化力」を紹介している。結果を出している人や社内で一目置かれている人に共通しているのは「職務を超えてちょっと手広くやっている」ことだと秋山は指摘する。同僚の仕事を奪わず、守備範囲を広げるのである。また、クロスファンクショナルチームに参加して他部門の人と一緒に仕事をする、自分のキャリアストーリーを作る、そして、ライフステージに合わせたフレキシブルな時間や場所で、自分が持っているスキルを維持し、成長させる仕事することの重要性を説くのである。