リーダーシップの基本を構成する7つの行動

堀(2015)は、本当のリーダーであるための条件として、7つの行動を挙げる。1つ目に挙げるのが「夢を語る」べき人だということである。したがって、リーダーは、魅力的な目標を設定できるだけの理想化あるいは情熱家という要素を持っている必要がある。また、リーダーは明るさを失ってはならないし、常に価値観を語り続けなければならないという。ただし、目標設定後、現在地の認識に必要なのは、リアリスト、アナリストとしての資質であり、環境変化を読めるのは、アナリストの資質と、鋭いセンスや勘であり、戦略策定は緻密な数学の能力が必要だと堀はいう。つまり、リーダーの語る夢は、実現への道筋が示されなければならないのである。


2つ目の行動は「自ら手本を示す」ことである。スポーツの世界では名選手でなくても名監督になれることからいえるように、リーダーとして手本を示すために肝心なのは、才能ではなく、学習することだと堀はいう。よって、リーダーを志す者は、若いうちから幅広い仕事を体験しておくべきだというわけである。


3つ目の行動は「チャンスを与える」ことである。チャンスを与えることで本人はやる気を起こして頑張るものだし、例え本人の実力が十分でなかったり、自信がなかったりしても、思い切ってチャンスを与えることで本人は成長していくし、自信がついてくる。つまり、若い人にチャンスを与えることは、将来をつくることだと堀はいうのである。


4つ目の行動は「考えさせる」ことである。相手にいかに深く考えてもらうか、それを常に考えながら行動することがリーダーに求められると堀はいう。


5つ目の行動は「誉める」ことである。人を誉めることはリーダーとしてかけがえのない大切なことだと堀は主張する。組織のメンバーは、誰もがリーダーの励ましの言葉を求め、認められたいという気持ちを持っている。「あなたがやっていることは組織のために役立つ」「あなたの才能や努力は必ず組織のためになる」といった誉め言葉は、言われた人の士気を高め、意欲を引き出す。「ありがとう」のたった一言でも満足感は一層高まるという。また、リーダーが人を誉めるときに重要なのが、結果ではなくプロセスを誉めることだという。そして、人の良さを認め、それを実際に口にできる人間になるためには、自分自身の成長が欠かせないと堀はいう。


6つ目の行動は「明日を語る」ことすなわち「前を見据えた語り掛けをする」ことである。リーダーの立場にある人は、メンバーに向かって、我慢してほしいという「お願い」をしなくてはいけないときがある。例えば、リーダーには痛みや摩擦を恐れず改革を進めることが必要なときがある。そのお願い、協力を願うためには、リーダーは明日を語れなければならないというわけである。「今日我慢すれば明日は必ずよくなる」と語りかけることが重要だと堀は指摘するのである。


最後の7つ目の行動は「つねに勝つ」ことである。メンバーは、自らの仕事を一所懸命やれば、結果が出せなかったとしても責任は問われない。しかし、リーダーは結果を出せなかったら負けである。リーダーはどんな立派なことを言っても、それが勝利につながらなければメンバーはついてこないと堀はいう。


なお、堀は、リーダーは組織のメンバーとなるべき人材に常に求めるべき資質を見極める必要があるとし、自らの会社の採用条件としてのチェックポイントを4つ挙げている。1つ目はIQである。2つ目は協調性に代表される性格であり、とりわけ「かわいげ」が大切だという。この「かわいげ」を構成する中心要素は「素直さ」である。3つ目は他人の気持ちがわかるといった「感性」である。そして4つ目が「攻撃力」である。