自分の人生を変え、組織を変え、世界を変える最短の方法

伊佐山(2013)は、シリコンバレーをはじめとして日米の起業家コミュニティを見て思ったこととして「今、自分ができることを積み重ね、自分の環境を変えること」が重要だという。与えられた環境で自分ができること、周囲を喜ばせることを行うといったように、「できることを続けていけば進む道が見えてくる」というのである。自分の周りが幸せになること、喜ぶことを指針に、自分の持つスキルや時間を惜しみなく目の前でできることに使う。自分ができることを徹底的に行い、業界の常識や知識、思考方法を身に着け、人脈を築いていく。この繰り返しが、自分を変え、社会を変え、世界を変えることにつながると伊佐山は信じている。できることの積み重ねが大きな変化を生むのである。


そして伊佐山は、自分の心に素直に従う自由と勇気を持つことの重要性を説く。好きなことをやり、やることを好きになり、心から楽しみ満足できる職業に巡り合うまでは動き続ける。したがって、常識や他者の枠組みに自分を無理に合わせないことが肝要だという。起業家精神とは、自分の心の声に従う強さと勇気だからである。伊佐山自身は、自分が直感的に良いと思った人物や、憧れる人間の属する組織に身を置いて、毎日全力で仕事に取り組むという極めてシンプルな行動をとり、時には自分の組織を離れて、業種の違う人間との交流を心掛けたという。そうすることで、自分のやりたいことは、事前に計画された点をだとったというよりも、後になって「点と点がつながってゆく」形で現実化していったという。伊佐山は、自分の夢が見つかるまでふらふらするくらいであれば、目の前にある興味のあること、尊敬できる人間を追いかけて毎日を真剣に過ごしてみてはどうかと問いかける。遠回りのように見えても、その繰り返しにおって自分が社会でなすべき役割、追うべき夢へと辿りつけるのだという。


さらに、少し怖いくらいの夢を持ち、自らの手で未来を切り開くことの重要性を伊佐山は主張する。とくに起業家にとって「夢」は成功への生命線だという。達成可能な夢など小さすぎる。少し怖いと思えるくらいでないといけないと伊佐山はいう。人が馬鹿げていると思うほどの大きな夢を持つ。そして、毎日それに近づいているのか、確認するということである。実際、成功している起業家のもつ特徴として、メガロマニア(誇大妄想癖)、パラノイア(偏執症)、ヒューメイン(人間味あふれる性格、愛嬌)を挙げており、宇宙に衝撃を与えるくらいの「夢」や「志」を持って働くことが可能な特徴だといえよう。