数学的思考で「論理洞察力」を鍛える

細野(2008)は、数学的思考力を高めることによって、考える力と、自分の考えを人に伝える力がつくという。なぜならば、数学的思考とは、論理(=考える道筋)に基づき、物事の仕組みを1つひとつ整理して考える方法であり、数学的思考力とは、情報をフローチャートにまとめる能力といってもよいからである。さらにいうならば、数学的思考力とは、バイアスにとらわれない素直な視点で的確に情報を色分けして「どこがポイントなのか」を見抜き、仮説検証と論理性を駆使することによって本質をつなぎ合わせ、情報の基盤(物事の全体像を把握する近道)を作れる能力なのだという。


なかでも、「一見すると正しそう」だが論理的に矛盾している言説や、いわゆる「屁理屈」を見抜き、そのようなものに惑わされない能力は、日常生活やビジネスにおいて重要である。細野はこういった能力を「情報洞察力」と呼ぶ。情報洞察力が身につけば、いわゆる「鼻が利く」ようになり、おかしな言説を直感的に見抜き、論理的にその欠陥を指摘できるようになるであろう。その「情報洞察力」とは何か。


細野によれば、情報洞察力とは、「思考の骨太さ」を見極めたりして的確に「つっこみ」を入れながら論理を総合的に判断する力である。思考の骨太さとは、1つひとつの論理の強さである。例えば、「デフレになると失業者が増える」のように、世間で用いられる言説は、構造的には論理の連鎖によって成り立っているが、1つひとつの論理には、問題がない(強い)ものもあれば、かなり無理がある(弱い)ものもある(純粋な数学ではすべてが完璧であるが)。その弱い部分が説得力のなさにつながっているため、それを見抜くことが重要となる。そして、おかしな論理を「それはおかしい」と具体的に指摘することが「つっこみ」である。


情報洞察力を磨けば、他人の意見や通説の論理的欠陥を見抜くことができるようになるのみならず、自分の考えた論理を、批判的に見直して完成度を高めるのに役立つだろう。