もの造り的人事管理論


松下幸之助は、「松下は何を創っているのですか」と聞かれたときに「松下は人を作っている会社だと答えなさい」と答えたエピソードがある。「ものづくりはひとづくり」という言葉も、メーカーなどでよく聞かれる。このように、もの造りに優れた企業であっても、その根底にあるのは人材であるという考えが多い。


日本の強みの1つが「もの造り」にあるとすれば、人材マネジメントにも「もの造り」の発想を転用することによって、強い企業が作れる可能性が高まるかもしれない。東京大学の藤本教授は、設計思想をもとに、もの造りは「製品設計の創造と転写」として理解できるという説を持っている。この考え方を人事に当てはめてみると、以下のようになる。


もの造り的人事管理論は、適切な素材としての「ひと」を調達し(人材調達)、「ひとづくり」に関する設計情報(人的資源アーキテクチャ)を素材に転写し、業務を行なう現場に適切にデリバリーするという一連の流れとして理解できる。ただし、調達や設計情報の転写のプロセス、つまりひとづくりプロセスは一回きりのものではなく、業務の遂行と同時並行的に行なわれると考えたい。


また、人材をいくつかの種類に分類して、それぞれ異なった方法で人づくりを行うことも大切であろう。例として、2つあげておこう。1つめは、企業として、摺り合わせを通じてじっくりと「つくりこむ」人材である。これは、いわゆる自社の中核社員である。じっくりとつくり込むためには時間がかかる。よって長期雇用と大きな投資を前提とする。2つめは、「カスタマイズする」人材である。業務をモジュラー化し、ある程度できあがった人材を調達し、カスタマイズしたうえで、モジュラーに割当てる。仕事するうえでのインターフェースがしっかりと定義されていれば、社内でつくり込む必要はなく、社外で獲得した知識やスキルで十分に仕事をこなすことができる人材である。市場流動性の高い、一部のプロフェッショナル型人材、提携業務を営む派遣社員、一般職などの活用がこれにあてはまるであろう。