「攻め」と「守り」のキャリア・マネジメント


「攻め」と「守り」について、ここでは、攻めを、リスクをとる行動、守りを、リスクを回避しようとする行動であるとしよう。この定義から、攻めのキャリア・マネジメントとは、積極的にリスクをとりながら、リターンの獲得を目指す、すなわちより良いキャリアを得ようとする行動を指す。


攻めのキャリアマネジメントを行うのか、守りのキャリアマネジメントを行うのかについては、リスクに対する個人差があるだそうし、年齢によって、例えば独身時代と、家族を抱え家計負担が大きくなってきた場合とでは異なるであろう。


カーネマンとトバスキーの「プロスペクト理論」によると、人は、勝っている時は保守的になり、負けてくるとリスクを求めるようになる。これは、リスクとリターンのセットがまったく同じであったとしても、どのようなポジションに自分が置かれているか、それによって物を見る「フレーム」が変わってしまうので、リスク回避的になったり、リスク好意的になったりするのである。ちなみに、合理的行動を前提とする世界では、リスク回避的な人間を仮定している。


わが国全体の状況を考えると、経済大国というレッテルが貼られた時点で、多くの人々のこころは、もう世界の中の「勝ち組み」という意識が根づいてしまったと思われる。いくら不況が続いても、飢餓状態になるわけでもない。勝ち組みだという意識が浸透しているため、リスクを犯したくない。できるならば、安定を維持したい。よって、多くの人々のマインドは保守的となり、「守り」のキャリアマネジメントに走る。


終戦直後の日本を例に出すまでもなく、現在負け組みの状態にいる場合、より攻める姿勢が出てくる。攻めの姿勢に入れば、多少のリスクを覚悟して、それでもなおかつ、現状よりもよい望ましい結果を求めたアクションを起こすのだと思われる。