主要企業の9割「定年延長せず再雇用で対応」・日経調査


http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20060703AT1D1203302072006.html

4月施行の改正高年齢者雇用安定法で企業は従業員に65歳までの就労機会提供を義務付けられたが、主要企業の9割は定年の廃止や延長ではなく再雇用制度で対応していることが日本経済新聞社の調査で分かった。60歳超の賃金水準は60歳時の5割前後が相場で、再雇用の対象は希望者全員か労使で定めた基準の適合者との回答が大半だった。企業は自社の高齢人材を賃金を抑えながら幅広く活用しようとしている。

このニュースは経済学的に重要な意味を含んでいる。


まず、60歳付近の労働者の本当の価値は、彼らがもらっている賃金の半分だということである。


じゃあ、彼らがもらっている残りの半分はいったい何だろうか。


それは、彼らが若いうちに安月給であった分の補償である。つまり、彼らは若いうちは、自分の価値以下しか賃金を支払ってもらっていなかったのである。そして、日本の人事の暗黙の了解というのは、終身雇用・年功序列という名目で、もらえなかった分を中高年になってから取り戻すという仕組みになっていたのである。


60歳定年の場合は、60歳で、その払い戻しがチャラになることを意味している。それ以上、働いてもらったら、今度は企業が賃金の払いすぎになる。だから、60歳でいったん、従業員と会社との長期的な貸借関係をチャラにし、それ以降の再雇用については、本当の彼らの価値に見合った金額を支払うということになるのである。そうすれば、企業も従業員の損得ゼロとなる。その、彼らの価値に見合った金額というのが、ニュースでいっている、60歳の賃金の半分ということなのである。


このような理屈だから、単に定年を65歳まで延長する(よって60超えても高賃金のまま処遇しつづける)ことについて抵抗感が強いのもあたりまえだと言える。