日常における買い物や懇親会の幹事など、すばやい計算力、暗算力などが求められる場面は多い。また、学校の試験や入試における算数、数学、理科などの問題においても、すばやく正確に計算できるスキルは解答時間を節約し、大きな武器となりうる。鍵本(2005)は、計算の速い人ほど、答えや結果を予測しすばやい判断と決断ができるという。生活やビジネス、入試などのさまざまな場面では、筋道を読む状況判断力と決断力があるかないかで実力の差が歴然と現れるというのである。
鍵本は、この計算力を強化し、決断力・集中力を磨くためのいくつかのテクニックを紹介している。まず、計算を間違えずに実行するためのキーワードとして鍵本は「暗記力」と「計算視力」をあげる。「暗記力」は、九九であれば多くの人が暗記しているが、それ以上の例えば2桁×2桁の掛け算の答えを暗記していることが計算力を飛躍的にたかめる要因となるということである。「計算視力」とは、計算式を頭の中で変形して簡単な計算に置き換える力のことだという。式を見たときに、このような式の変形がうっすら見えてくるようになると「計算空間」を持っているということになる。
例えば「55×22=?」を瞬時に間違えずに解くためには、馬鹿正直に筆算をするのではなく、「(5×11)×(2×11)=?」とうっすらと見えてくることがポイントである。そうなれば「(11×11)×(5×2)=?」と式を入れ替えば、答えは「1210」と間違えずにすぐに出せる。馬鹿正直に筆算をするほうが計算間違いをする確率が高い。ここで「11×11=121」と瞬時に出せるのが「暗記力」である。
比の問題を解く際にも、馬鹿正直に比の公式を使うのではなく、計算力のある人は手っ取り早く答えを予測しながら計算していると鍵本はいう。例えば「2gの食塩水を溶かして500gの食塩水を作ったとき、この食塩水150gには何gの食塩が溶けているか」というような出題があったとき、計算の苦手は人は、「2:500=x:150」のような比の公式を持ち出して計算しようとする。しかし、計算力のある人は「2gに何かをかければよい」と最初に気づく。そして、答えは2gより大きいか小さいかを考え「小さいはず」というあたりをつける。あとは、問題にある2つの値(500と150)を組み合わせて(150/500)にして、それを掛けるという手順を踏むというのである。
鍵本は、このような計算力を強化するコツや練習をさまざまなかたちで紹介している。