志の醸成サイクル

グロービス(2011)では、「志」を「一定の期間、人生をかけてコミットできるようなこと(目標)」と定義する。一定期間とは、最低でも2〜5年であり、自らの意志に基づいて自主的に「時間」や「意識」を割いて取り組むものとしている。これに対して、よりスケールの大きな「大志」は「一生涯を通じて達成しようとするもの」と定義している。


志を抱いて生きることが重要な理由は、「自分は何を付加価値として世の中に還元するのか」「何のために働くのか」「自分の今の時間をコミットしてやるべきことは何か」ということにしっかりと向き合い、考えることが重要だからである。そして、個々人の志の成長は社会にとっても新しい価値をもたらす可能性が高いことから、志の成長を通じて、より実りのある人生を歩む可能性が高まるという。


グロービスによれば、ある日突然、人に感動を与えるような大きな志が頭や心に浮かんでくるわけではなく、紆余曲折ありながら、様々な人生経験を経ながら、志も少しずつ変化しながら成長していくのだという。そして、その志の成長プロセスを、5つのフェーズからなるサイクルとして説明している。これは連続的にらせん状に成長していくモデルである。


まずは、あるきっかけで目標を持つことから始まる。それに基づき、(1)新たに見出した目標の達成に向けて、実行を進めていく段階がある。次に、(2)目標の達成に関わらず、なんらかの理由で目標に到達できない場合も含めて、その取り組みがその人の中で終わってしまう段階がある。その結果、(3)自分が没入し取り組んでいた目標の位置づけや目標を取り巻く環境を、一定の距離をとって客観的に見つめ出す段階が来る。そして、(4)自分自身にとってその目標が何を意味するのか、自分が本当にしたかったことは何なのかを問い、答えを探す段階がある。最後に(5)客観師と自問自答のプロセスを経つつ、自分の価値観やスキル、実現可能性、リスク等に鑑み、新たな目標(志)を見出してくる段階が来る。


このことから、今、取り組んでいることに一定期間人生をかけてコミットできるなら、迷わずに前に進んでいくのがよく、もしそのような状況になければ、自らを客観視し、新たな目標を設定するために自問自答をすることを勧めている。