デザイン思考の方法

棚橋(2009)は、人間が生きる環境には、自然が生み出したもの(自然物)と、人間が作ったもの(人工物)とがあるという。そのうち人工物は、必ず何かの意図を持って作られているというのであれば、それは広い意味で道具であると指摘する。自分に、他者に、社会に、何らかの役に立つことが意図され、生活のために、人生のために、生命のために必要とされる道具としての人工物を作る活動が「デザイン」だと棚橋はいう。


デザインの対象は有形物とは限らない。サービスやプログラムなど、物理的な実体を持たないものも含め、人間が何らかの意図を持って生み出したものはすべてデザインの成果だというのである。つまり、デザインは生活に秩序を提案し実現するものであり、物に意味を与える仕事なのだという。人が「分かる」ためには物事を「分ける」必要がある。概念で分けたものを五感で人が認識できる色や形を与えるのがデザインである。そのように物に意味を与え、生活秩序を築いていくのである。デザインとは、人間自身の生活、生き方、そして、生命としてのあり方を提案する仕事である。


デザインは生活文化をつくる仕事であり、人々の暮らしを豊かにする仕事である。つまり人間中心の仕事である。商品やサービスをつくることで人々の生活、社会がどう変わるのかを想像することが大切である。そのためには、デザインする人自身が文化に支えられた生活をすることが必要だと棚橋はいう。