デザイン思考とは何か

デザインという言葉を聞くと、モノのカタチのデザインを思い浮かべがちであるが、紺野(2010)は、デザインの本質的な意味や価値は、カタチに至るまでのコンセプトや、製品やサービスを構成する多くの要素間の関係性の形成力にあるという。単に美しいものを創ること、いわゆる審美性の追求だけがデザインの目的ではないのである。さまざまな人間の感情や身体(こころやカラダ)とのインタープレイ(遊動)が仕掛けられているのがよいデザインだという。


紺野によれば、デザインとは「デ(de)」+「ザイン(sign)」、つまり、従来の意味(記号)の組み合わせを否定し、変えることである。物事を多様に関係しあった要素(記号:sign)の集合体として再認識し、それらを綜合(シンセサイズ)するということである。従来の社会や文化のしがらみを批判して、いったん記号に分解(破壊)し、新たに組み替える(創造)。すなわち既存の事物を記号に分解、再構成するわけである。


また、デザインは常識を否定し眼前の複雑な状況をシンプルに解決しようとする「引き算」のアプローチだという。直観、身体、感情、知性を用いて現場での個別具体の現実から仮説を生み出し、目的に向けて諸要素を綜合・創造する知だというのである。そして、デザインは人々を創造の喜びに誘うパワーを持っている。


このような視点から考えると、「デザイン思考」とは、知のディコンストラクション(解体)ということになる。