光り輝くチャンスを逃すな

スタンフォード白熱教室でおなじみのティナ・シーリグが初日の最後に示すのは「光り輝くチャンスを逃すな」である。これは、彼女の約束と学生への期待だという。人生にリハーサルはない。最高の仕事をするチャンスは一回きり。光輝くとは、いつでも期待以上のことをすると決意することだとシーリグはいう。毎回、ベストを尽くすということである。


人生やキャリアにおいて理想的なのは、スキルと情熱と市場が重なりあうところ、つまりスウィート・スポットを見つけることだと言う。つまり、自分が大好きなこと、自分が得意なこと、そしてそれを求め、それをありがたがってくれる顧客が存在することが重なる場所を見つけるということである。


別の言い方をすれば、キャリアを築くうえでいちばん大切なのは「仕事だとは思わずに取り組める役割を、社会の中に見つけること」だという。それを見つけ、それを極めるようにすれば、それが仕事であり遊びになる。仕事と趣味、ワークとライフのバランスというような次元でなく、仕事によって生活が豊かになる。やりがいがあるというだけでなく、前向きに情熱を傾けられ、人生を奪うのではなく人生を豊かにしてくれる。


しかし、そういった役割を見つけるのは簡単ではない。好きであっても得意でない場合もあるし、好きで得意なことがあってもそれを活かす市場がない場合もある。したがって、実験を繰り返し、多くの選択肢を試し、周りから明に暗に受け取っているメッセージを検証し、正しくないと思えば突っぱねることが必要だとシーリグはいうのである。そして、冒頭に述べたように、光り輝くチャンスを逃さぬよう、一所懸命やる、ベストを尽くす、いつでも期待以上のことをする、ということなのだ。


シーリグは、自分のキャリアはフロントガラスでなくバックミラーで見ると辻褄があってくるという。つまり、自分のキャリア・パスは、振り返ってみると、ちゃんと筋道が通っているということである。逆に言うと、将来の道はぼやけていて、不確実なことの連続である。しかし、大きなチャンスが巡ってくる確率を上げるように行動することはできるのだという。時にはまわり道をしているように感じることもあろう。無駄な時間を過ごしていると思うときもあろう。しかし、人生に無駄なことなど1つもないということが、後から振り返ればわかるのである。