「性弱説」に基づくマネジメント

吉越(2011)は、稲盛和夫氏の「人間とは弱いものである」という「性弱説」を紹介している。人間というのは、床に札束が落ちているのを見つけたら、持って行ってしまうくらい「心が弱い」のだというのである。そして、以下のような議論を展開する。


一万円札が山ほど机の上に転がっていたら、1枚くらいとっても構わないだろうとポケットに入れてしまう人がいたとする。では、その1万円をポケットに入れた人が悪いのだろうか。たしかに、やっていることは悪いことである。


しかし、性弱説に立つと違う解釈になる。人間はもともと性弱なのだから、むしろ、1万円が床に落ちていたり、そこらじゅうに雑然と置いてあったりすることに問題があって、その点を深く反省すべきなのだと説く。


したがって、失敗した人をつかまえて罰則を与えるよりももっと重要なのは、トラブルが拡大しないための「緊急対策」と、それがなぜ起こったのかを突き詰め、それを繰り返さないための「再発防止策」を徹底的に検討し、つくりあげることなのだと論じるのである。