ユニクロが目指す「日本の新しい会社」

柳井(2011)によれば、ファーストリテイリング・グループでは2010から「民族大移動」と銘打った人事清濁をスタートしているという。これは、海外のグループ企業も含めた国境を越えた人事交流を活発化させ、10年後には、日本の本部社員の半分以上は外国籍の人たちが占めるようにするというものである。


しかし、こうした施策は決して欧米流の経営を目指しているからではないと柳井は言う。そうではなく、日本人の、日本のDNAという長所を生かしたかたちで「日本の新しい会社」になろうとしているのだという。「組織の一員として仕事をする忠誠心」「勤勉さ」「清潔で、きれい好き」「異質のものを受け入れて自分のものにする包容力」。ユニクロは、こういった日本の持つ良さ、DNAに磨きをかけることによって、世界で勝負しようとしているのである。


例えば、ユニクロを論じるジャーナリストや評論家、アナリストたちは、商品のことばかりに目がいくようであるが、ユニクロのサービスは、日本人のDNAを感じさせるきめ細かいものだと柳井は言う。これは、かゆいところに手が届くような接客でないと満足しない日本の消費者という厳しい環境があるからこそ発達したものである。このような面も含め、自社の変革を繰り返しながら、世界に通用する日本のDNAを生かしてグローバルに戦っていこうとするのが、ユニクロの目指すグローバル化の道なのだと考えられる。