日本のイノベーション

藤井(2010)は「自己変革」や「自己否定」を自律的に行うのは至難の業だと指摘する。ステージが大きく変わればプレイヤーも交代しなくては成功できないほうが圧倒的に多い。ガバナンス自体を変えられてしまうかもしれないという危機感が退路を断った覚悟を生み出し、はじめて本質的な改革を可能にするのだという。それを踏まえ、これからの日本に必要なのは、ビジネスモデル・イノベーション、ガバナンス・イノベーション、リーダーシップ・イノベーションの3つだと藤井は言う。


まず、デジタル化の推進でものづくりのパラダイムが世界的に大転換している。日本企業は新しいオープンな環境でも収益を確保し続けられるビジネスモデル自体のイノベーションが必要とされている。次に、どんな強い組織や集団でも長く経てば必ず澱みを生む。新陳代謝のサイクルを仕組みとしてつくりこむことで、既存の組織も緊張感で強くなり新規参入組との健全な競争を生むガバナンスのイノベーションが必要である。そして、現在の日本は戦後復興のハングリーで強烈な原体験をもった世代がつくった富を、危機と飢餓をしらない世代が食いつぶしている状態である。よって、国家レベルんの仕組みとして、競争原理によりガバナンスが変わる真の緊張感、起業家を奨励する仕組みと社会の価値観、多様性を取り入れる新陳代謝の奨励、グローバルな仕組みの中で日本の繁栄を図る世界観などをベースに、リーダーシップのイノベーションを図っていくことが求められるという。