マーケティングは人々に夢見る力をあたえる仕事

嶋口ほか(2008)は、マーケティング・アンビション思考と称したコンセプトにおいて、マーケティングは人々に夢見る力を与えることができる仕事であることを示唆している。マーケティングが他の経営機能と比較して異質なのは、夢を追いかけていることであり、極めてアンビシャスなものなのだと言う。


人々に夢見る力を与えることは、人々を勇気づけることであり、元気にさせることであり、笑顔と喜びを与えることである。では具体的にどうマーケティングが人々に夢を与えるのか。


1つ目は、画期的な新製品という形をもった夢である。マーケッターと技術者たちが力をあわせて不可能を可能にする。iPodiPadはその例であろう。2つ目は、すでに存在する商品やサービスに新しい意味を与えることである。スターバックスはたんなる喫茶店ではなく、店での体験を通じて日常の中の非日常を演出したところが特異なのである。ディズニーランドもそうである。3つ目は、エモーショナルな象徴としての夢を与えることである。顧客にとって人生の根幹をなす一部にまでなり、生きがいにまでなる象徴を与える。ルイ・ヴィトンやコカコーラがそうであろう。


とりわけ成熟社会では、顧客に驚きを与えるイノベーションが必要である。イノベーションは、常に先端的な顧客(消費者)さえも超えた者の手によって顕在化する。そのために、マーケッターはドリーマーでなければいけない。最先端の顧客をさらに上回る感激体験の場数を誇る人間であるべきである。そういったドリーマーが夢の世界を作り上げれば、消費者は驚き、感激する。そもそもブランドづくりの基本は、夢、一貫性、革新なのだ。


このように、マーケティングのミッションは人々に夢を与えること。端的に表現すれば、顧客が喜んでいる顔、姿を具現化することなのだと言う。一流のマーケッターは常に自らがかなえたい夢を具現化してきた。そのためには、夢を見る力、使命感、洞察力、ビジュアライズする力、ほかの人を巻き込むコミュニケーション能力、目標設定能力、そして強固な意志の力が大切なのだという。