齋藤流「段取り力」

齋藤孝はかねてから「段取り力」を提唱している。


齋藤(2006)によると、段取り力の1つの理想としては、あらかじめ予測可能で平穏無事に達成できる目標ばかりをたてて適度な手順やスケジュールを用意するのではなく、自分の努力や成長を含み入れた予測を立て、それを実現するための大胆かつ現実的な段取りを組むことである。


また、段取り力には場をつくる力も必要だという。場をつくる力とは、全体を大づかみにして押さえるべきところは押さえておくが、新たな展開のときには融通が利く余地を残しておき、突発的な出来事もプラスに転化して取り込める柔軟な力のことである。その場で自由に討論が絡み合ったりすることで、新しい何かが生まれる雰囲気を作り、遊びを作ることのできる力のことでもある。つまり、状況に合わせて、その都度、細かなずらしを行っていく臨機応変な対応力が段取り力というコンセプトに込められていると齋藤は説明する。


齋藤(2003)は、段取り力のある人は、最低限決めなくてはならないことや、やらなくてはいけないことをきっちりと押さえ、そのポイントははずさないようにした上で、真ん中は緩やかにしておくことができるという。要するに余裕をもたせておくことができるということである。大筋を外さない力と優先順位をつける力がある。だから、最大の鍵になるポイントに最大のエネルギーを注ぎ込むことができる。


ポイントは、不確実性の考慮であろう。まず、不確実ではあっても自分が大成功して状況が飛躍する状況を想定する。そのときにその飛躍をいっきに伸ばしていく準備ができていることが望ましい。同時に、想定外のことが起こったりして物事がうまく進まない事態も想定する。この場合に柔軟な対応ができる準備をしていくことも望ましい。この2つを想定したうえで、多少のリスクも負いつつ、大胆に、大きな器で、「布石」を打っていく、あるいは「仕込んでおく」ことが重要であろう。