不確実な世の中で成功する確率論的思考

田渕(2009)は、世界は人々が感じるよりもはるかに不確実性に満ちており、不確実性は世の中の本質であるとしたうえで、不確実性の世界において成功をもたらす「確率論的思考」を提唱している。


まず、不確実性は、何者にも予測できない。したがって、不確実性に対処するのに必要なのが「多様性の確保」である。多様な観点、多様な手法、多様な才能、こういったものを取り込んでおくことが成功に導く。次に、不確実性のもとでは、失敗を避けることができない。ゆえに、大切なのは、不確実性に起因する失敗を許容し、失敗から学び、修正ができることである。むしろ、致命的な失敗を防ぐためにも、小さな失敗をしながら軌道修正していくことも大切である。これを「失敗力」とでも呼んでおこう。そして、不確実性な世界では、確率を伴うため、「長期的視点」を持つことによって、対数の法則を働かせ、真の実力が発揮できるようになる。つまり、勝てる確率を高めることは、短期的にはなお失敗する可能性を持ちつつも、長期的には成功に近づいていくと考えられる。


さらに、将来の予測や見通しとしての確率を見込むさいには、「偏見やバイアスにとらわれない」ように工夫する必要がある。そのためには、客観的データに基づいた統計的手法が強力な武器となる。また、正確に未来を予測するのではなく、「仮説・検証型アプローチ」によって、仮説を立て、それをデータで検証するというプロセスを連続的に行うのがよい。それと関連し、完璧な計画や完成形を想定せず、状況を見ながら少しずつ変化させ、改善しつづけるといったような「試行錯誤による進歩」が望ましいと田渕は指摘する。