熟断思考とは何か

籠屋(2914)は、9割の些細な問題は即断即決で解決できるが、1割の重大な問題には、熟断思考が求められると指摘する。熟断思考が求められるのは、(1)不確実性のもとで、(2)複数の選択肢があり、(3)どのような価値基準に基づいて決めるかで結論が大きく異なり、下した決断次第で今後のあり方に極めて大きな影響が出るような問題である。また、(1)決断したことを実行した際、その結果が出るまでの時間が長い、(2)投入する資源が、自分の持っている資源全体に対して非常に大きい、(3)悪い結果となった時、自分にとっての打撃が甚大という特徴を持つ問題である。これを即断即決で行えば命取りになる可能性があるというのである。


では、熟断思考とは何か。籠屋は、熟断思考の本質的要素とステップを次のように説明する。最初のステップは「悩みや課題のリストアップと全体観の把握」である。本当に大事な悩みや課題を考え、リストアップし、優先順位を決める。リストと優先順位はアップデートし続ける。


籠屋が説明する次のステップは「フレーミング」である。これは、課題をどのように定義するかである。フレーミングでは「選択肢」「不確実性要因」「価値判断尺度」の3つの要素を抽出し、整理するための作業である。「選択肢」を抽出する際には、「いつ頃、どうなったら嬉しいか」を考え、それを実現するために「自分に何ができ、どうしたらそれを実現できるか」を想像し、取りうる選択肢を、時間軸を含めたかたちで抽出する。また、その際に、不安や自信、懸念や迷いを書き出すことにより、不確実性要因と価値判断尺度も抽出する。


熟断思考の3つ目のステップは、フレーミングでリストアップした「選択肢」「不確実性要因」「価値判断尺度」の3つの要素を精査することである。その際、選択肢の中身はとことんリアルに想像し、不確実性については複数のシナリオに可視化する。価値判断尺度を精査する際には、それに抵触する場合には選択肢を選べないというような「制約条件」と、すべてを満たすことができない基準同士を意味する「トレードオフ」について精査する。その上で、それぞれの選択肢ごとの「嬉しさの総和」を計算する。


そして、最終的には、3つの要素を統合し、それぞれの選択肢について、大成功、中成功、不成功のケースを考慮したうえで意思決定をするのだと籠屋はいう。