ヒューリスティクスとキャリアの意思決定

キャリアの意思決定においては、ヒューリスティクス(発見的思考・認知的近道)が、影響を及ぼすことが多いと考えられる。学生の就職活動を例に説明しよう。


ヒューリスティクスで有名なものに、利用可能性ヒューリスティクス(availability heuristic)(想起しやすい事柄や事項を優先して評価しやすい意思決定プロセス)、代表性ヒューリスティクス(representative heuristic)(特定のカテゴリーに典型的(代表的)と思われる事項の確率を過大に評価しやすい意思決定プロセス)がある。この2つが、学生の就職活動における意思決定バイアスにつながる。


例えば、商品やサービスのブランドイメージがよい企業については、そのイメージを用いて、職場の様子を想像しがちである。よって「仕事が面白そうだ」「やりがいのある仕事ができる」というような判断をし、その企業に入社したいと思ってしまう。これは、利用可能性ヒューリスティクスが影響している例である。


また、その企業に代表的な職種(例えば、広告会社ならばクリエイター)を想定し、自分がその会社に入ったら、そういった類の仕事ができるのではないかと思ってしまう。大企業で新卒一括採用をしている会社であれば、自分が配属される仕事や部署については不確実性が高く、まったくイメージとは違う職種に配属される確率(例えば、広告会社で経理の専門職)もあるのに、そういった確率を無視あるいは低く見積もってしまう。よって、その企業に代表的な職種に魅力を感じ、その企業に入社したいと思ってしまうのである。これは代表性ヒューリスティクスの例である。