森生(2016)は、会計やファイナンスという学問は、数字という言語を使ってコミュニケーションをとる際の文法書というスタンスで、企業価値算定(バリュエーション)の基本構造を解説している。まず、企業価値算定と株価算定は深くつながっているので、株価指標を持ちいてみると、企業価値算定の中核を担う次のシンプルな公式が成り立つ。
企業価値の本質は「のれん(無形資産)」の創造であることを考慮すると、上記の公式は、以下のように解釈できる。
のれんの創造力(PBR)=将来への期待とリスク(PER)×足元の効率性(ROE)
つまり、上記の公式は、企業の存在価値の源泉であるのれん価値の創出力を足元の資本効率性と将来の成長期待の掛け算で数値化して表現できることを示していると森生はいう。またこの中でもPERは、「企業価値=将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値」であることを、企業の将来を描く力とそれが実現できるかのリスクを通じて理解しようとしていることも示している。
さらに、企業価値は以下のような式で示すこともできる。
ROEを分解するデュポン式も役に立つ。デュポン式は以下のようにあらわされる。
株主資本利益率(ROE)=売上高利益率(ROS)×総資産回転率(S/A)×財務レバレッジ(A/E)
株主資本利益率(ROE)=総資産利益率(ROA)×財務レバレッジ(A/E)
これは、以下のようにも解釈可能である。
資本効率(ROE)=会社の収益性(ROS)×資産効率性(S/A)×負債の有効活用(A/E)