「有名人になる」という「ビジネス」

勝間(2012)は、「わたしの顔を見たときに名前を挙げなくとも勝間和代だとわかる人の割合(非助成認知率)を世の中のおおむね30%くらいにまで上げてみよう」という決意のもと、2008年に「有名人になる」という「ビジネス」を始めたという。その経験をふまえ、勝間は、相当の決意と目的意識、そしてある程度確率の高い方法論を繰り返し行えば、高い確率で有名人になれると説く。その根拠の1つとして、競争有意で勝つ統計学(ジェフェリー・マー著)にある「結果を重視してはいけない。確率的に高い割合で勝算があるものにチャレンジし続けているかを重視せよ。正しい意思決定をしている場合には、短期的に結果が伴わなくとも、中長期的には必ず勝つのだから」という言葉を紹介している。


勝間は「有名人になる」というビジネスの方法論を5つのステップに分けて解説している。第1のステップは「自分の商品性を把握し、顧客やパートナー、競争相手を特定する」ことである。第2のステップは、「自分がターゲットとする市場について、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを行う」ことである。第3のステップは、「自分を売り込むためのサービスを開発し、そのサービスの提供プロセスを管理する」ことである。第4のステップは、「自分がつくったサービスを普及させるための適切なチャネルを見つける」ことである。そして第5のステップは「自分のサービスに適切な価格をつけ、品質を保証する」ことである。


第1のステップの「自分の商品性を把握する」場合には「複合能力」で市場性を獲得できるかどうかに注目すべきだと勝間は説く。勝間の場合は「金融・会計やコンサルティング経験」に加え、「概念的なものを言語化する能力」だとする。そして、有名でありつづけるためには、いかに先行性を保ちながら、その市場に甘んじることなく、さらなる市場を継続的に開拓するかだという。そして、自分の商品性は、市場とのやりとりのなかでまわりが育ててくれるものだという。また、自分の「好き」を追求して、自分が人に役立てるところはなんだろうと考え続けると、意外とそこにブルーオーシャンは見つかるものだという。


ステップ4での、自分がつくったサービスを普及させるための適切なチャネルを見つける際には、第一歩を踏み出すことが結構ハードルが高いことを指摘する。したがって「できることはすべて行う」という精神で、自分の労力でまかなえることであれば、何でもやってみるという姿勢の大切さを示唆する。しかし、第一歩を踏み出すことができたならば、有名になるためのチャンスは意外と芋づる式にやってくるという。そのチャンスを持ってきてくれる人たちに感謝するとともに、そのチャンスを見逃さないことだという。


つまり、「チャンスは人からくる。その人をどうやって呼び込める人材になるか、が重要なのだ」「芋づる式の種を見つけるまで、勝つ確率の高いじゃんけんを続ける」ことが有名人になる方法だと指摘するのである。