昨今、グローバル化は歴史の必然であるという論調が多数を占める。しかし、馬渕(2014)によれば、かつては、共産主義こそが歴史の必然だと言われていたことを忘れてはならない。つまり、共産主義のその後の経緯を見ればわかるように、共産主義もグローバル化も歴史の必然なのではなく、世界支配を企図するなんらかの主体によって正当性を主張されている思想でありイデオロギーにすぎないという可能性が高いということである。そもそも、歴史に必然などないという見方もできる。グローバル化を推進する思想やイデオロギーをグローバリズムとしよう。
馬渕によれば、グローバリズムの動きの背後にあるのが、金融を通じて世界を支配しようとする国際金融勢力である。しかも、それ以前の、共産主義、ロシア革命、あるいはアメリカ南北戦争などの時代から、すでに国際金融勢力が大きな影響力を発揮してきたのだと馬渕は指摘する。つまり、現在地球規模で世界をグローバル化しようと策動しているのは国際金融勢力であり、かつてロシア革命を支援し、第二次世界大戦後の戦後処理でも影響力を示したのが国際金融勢力だというのである。ここでいう国際金融勢力とは、ナポレオン戦争でヨーロッパ全体が疲弊する中で貸付により巨大な富を築いたユダヤ系のロスチャイルド家などの国際金融資本家を指す。
国際金融勢力の動きは、ユダヤ人迫害の歴史と連密な関係にあると渕は解説する。例えば、ロシア革命の真相は、共産主義によって労働者を解放することではなく、ユダヤ人を解放することにあったという。馬渕によれば、そもそも共産主義は労働者の思想ではなく、国の資源と物言わぬ大衆を効率よく搾取管理する一握りのエリート支配層のための思想である。だからこそ、社会主義国は少数のエリート支配による独裁政治になったのである。しかし、革命によりロシアのロマノフ朝を打倒すること、そして国際主義もしくは普遍主義を掲げ民族主義を否定する共産主義は、ユダヤ人迫害を阻止するのに好都合であったということを馬渕は示唆するのである。
また馬渕は、東西冷戦は、国際金融勢力が自ら樹立したソ連という国家を使って、アメリカ国家を解体しようと狙ったものであるという解釈を披露する。第二次世界大戦後にアメリカが一人勝ちすることは、世界支配を意図する国際金融勢力にとっては都合が悪かったからである。しかし、アメリカで新自由主義が台頭し、国際金融勢力のアメリカ支配が強まるにつれて、ソ連の存在は不要となり、結局は「使い捨てられた」のだと馬渕はいう。そして現在は、国際金融勢力はロシアをグローバル経済に組み入れたいと思っており、それが、ロシアにおいて民族文化を養護し国家の独立を図ろうとするナショナリズムとの対立を生んでいることを指摘する。
そもそも、国際金融勢力は、ナポレオン戦争の時代から、国家にマネーを貸し付けることによって巨額の富を蓄積してきた。巨額の富をバックに、南北戦争やロシア革命、世界大戦においても、国際金融勢力が国家にマネーを供給し、それを通じて富を拡大させてきた。そして、これからの時代、世界がグローバル市場と貸し、自由主義的な資本主義経済が徹底されればされるほど、世界におけるマネーの力が増すことになる。そして、国家に対するマネーの貸付の例からもわかるように、世界中のマネーを供給しているのが国際金融勢力である。ゆえに、経済のグローバル化が進むほど、国際金融資本勢力が、世界中を駆け巡るマネーの支配を通じて、世界全体を支配できるようになるということなのである。