外山(2009)は、何かを発見するための方法の基礎にあるのは「比喩」であるとしたうえで、科学を中心とする学問の比喩を用いた発見の方法を紹介している。大別すると、数学的方法、幾何学的方法、物理学的方法、化学的方法、論理的方法である。
数学的方法には、まず、アナロジー法がある。これは、ABCが分かっている場合に、A:B=C:Xと考えることによりXの存在を発見する方法である。次に、因数分解法は、XYZという事象があるときに、X=a×b×cのように分解し、共通項をくくりだすようにして相互関係を発見する方法である。順列組み合わせ法は、ある物事が一定の順序で並んでいるときに、その並び方を変えることによって新しいものにめぐり逢おうとする方法である。
幾何学的方法には、延長線法として、例えば、ABCDIFGHというような一連の事象があるときに、AからHまでの線を延長した線上に、新たな事象の可能性を求めるような方法である。補助線法とは、そのままでは解決しにくいことについて、ある橋渡しをするものを導入して理解していく方法である。相似形法は、対象があまりに大きかったり一部が隠れている場合に、それを縮尺したモデルを考えて求めるものを得る方法である。幾何学的変形法は、総和あるいは積を変えずに形を自由に変えるように、物事を(本質をそこなわないかたちで)言いかえたり、複数のヴァリエーションを考えたりするなどの変形を行うことで新たな発見を得ようとする方法である。
物理学的方法には、破壊法として、いままであるものの1部を破壊することによってそこに隠れていた部分を発見する方法がある。慣性利用法は、ABCDEFと展開しうるものを急停止させるとFのかわりにF´というものが生まれるという法則を利用しようとする方法である。真空法は、例えば2つのものを比較して、一方にあるのに他方に欠けているもの(真空)を明らかにし、そこから新しいものを導き出そうとする方法である。コンフリクト・コントラスト法は、異質なものあるいは対照的なものが接触あるいは衝突するときに、いままで気づかれなかったものが顕現することを利用しようとする方法である。ショック法は、常態にあるものでは起こらないことを、ある特定の状況下に置くことによって生起させる刺激方法である。条件をいろいろ変えて新しい可能性を追求するようなやり方である。
化学的方法には、触媒法として、一見関係のなさそうなものを導入して新しい化合を触発させるような方法がある。合成法は、あるものを分析し、それと等価なものを別の方法によって合成する方法である。発酵法は、ABCDというものを一緒にして、しばらくある状態で寝かせておくことで発酵させる方法である。蒸留法は、不純物の混入しているものから純粋な新しいものを得ようとする方法である。
論理的方法には、モンタージュ法として、ある対象の中にある重要な部分を選択し、それに新しい組み合わせ、配列を行って新しいものを作りだそうとする方法である。自然のままではあまり面白くないものを、ある部分を強調して順序を入れかえたりするものである。論理的帰納法は、1つ1つの論理を重ねていくことで、はじめは予期しなかったものに到達しようとする方法である。関係づけの枠を変える法は、モノの見方を規定する「色めがね」を取りかえることによって別の視点から物事を見ようとする方法である。弁証法は、AとBが既知のとき、その2者を正反として対立させ、その合力から「合」を求め、新しい論理的立場を得ようとする方法である。