野村(2012)によると、フューチャーセンターとは「未来の価値を生み出すセンター」であり、それは「対話のための専用空間」であり「人と人とのつながり」であり「企業や社会の変革装置」でもある。フューチャーセンターは企業のイノベーションに対する欲求と社会変革の目的を一致させることができる。フューチャーセンターは創造的(クリエイティブ)な発想でセクターの壁を超え、対話(ダイアログ)によってセクター間の新たなつながりを生み出し、そのつながりの中で、企業と社会起業家が手を取り合って、一緒に社会と市場を変革し、新たな産業を生み出していくのだという。
社会変革装置としてのフューチャーセンターを引っ張っていくのが、フューチャーセンター・ディレクターである。彼らに求められる能力は「ネットワークで社会を変えていく想像力」だと野村はいう。つまり、自らのネットワークを最大活用し、他の業界、行政、社会セクター、起業家など、多様でかつ共感し得る人たちを、社会的テーマの解決に向けた志の高い場に招待することである。
そして、フューチャーセンターを運営する方法論の3つの軸が、「対話の方法論」「未来志向の方法論」「デザイン思考の方法論」である。対話の方法論は、相互理解・信頼の関係性の構築、異質からの気づきの獲得、内省や思考の深耕などの方法論である。未来志向の方法論とは、複数の未来シナリオを想定し、未来スキャニング、シナリオプランニング、フューチャーサーチなどを通して未来からバックキャストする方法論である。デザイン思考は、ユーザー観察、ブレインストーミング、経験プロトタイピングなどを通して、体験から学ぶ、作りながら学ぶ、形にしてみることで改善し続けるような方法論である。
つまり、フューチャーセンターの方法論は、効果的な対話を通じて未来を想像し、同時に手を動かしながら形にしていくプロセスだといえよう。