アイデアの地層を作る

倉下(2012)は、アイデアを生み出すイメージを「畑」に例える。倉下が依拠する考えは「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」というのと、「アイデアを生むためには、手間と時間が必要である」ということである。既存の要素の新しい組み合わせでアイデアが生まれるというのは、種と土との組み合わせで実ができるイメージであり、種から芽が出て、実を結び、それを収穫するという工程が必要な点は、手間と時間がかかることに相当し、アイデアが生まれる流れとも合致している。そして、それぞれの工程で便利な道具があることも倉下は示唆する。


ということは、良いアイデアを生み出すためには、時間をかけてアイデア畑を作る必要があるということになる。良く耕された畑からはたくさんの実が育つということである。たくさんのアイデアが育てば、その中にキラリと光るアイデアも出てくるというわけである。


さらにいうならば、アイデアをたくさん生みだすようになるためには、「種をたくさん見つける」「土壌を豊かに保つ」「きっちり実を収穫する」の3つが重要になると倉下はいう。まず、日常的に種を探し続け、大量に確保しておく必要がある。まずは「質より量」である。土壌にあたるのは、その人の知見、体系的な知識、体験、考え方、価値観といったものだという。発想が豊かな人は、物の見方も多様だということだ。収穫とは、一つの形にまとめることだと説明する。大きく発想を広げた後に、そこから必要な部分だけ抽出する収束プロセスである。


こういったアイデア畑を作ってアイデアを生み出すプロセスを助ける道具(ツール)が「考具」であると倉下はいう。「種を集める」「種を育てる」「実を収穫する」といったプロセスにあった考具を組み合わせ、うまく使いこなすことで、アイデアを生み出す効果が高まるというわけである。そういった考具にはアナログなものもデジタルなものもある。それらには、メモや、ノートや、整形化・構造化のツールが含まれると解説する。