世界は論理的につくられているのか

佐藤(2010)は、20世紀に入って相対性理論量子論を得た現代物理学によって、この世界を形づくる究極の微粒構成要素の正体にかりぎなく近づき、また、宇宙の誕生から現在にいたる歴史の大まかなシナリオを描けるようになったと説明している。


アインシュタインによる特殊相対性理論は、きわめて単純な原理を貫くだけで、だれもが気づかなかった時間と空間の本質を見抜くことができることを示した。また、量子論は、哲学的な意味での「無」や「ゼロ」とう状態は物理的にはありえないことを示した。例えば、真空とは、粒子が存在しない「無」の状態と粒子や反粒子が存在する「有」の状態を揺らいでいる存在だということだ。


例えば素粒子論は、たんなるミクロの世界のことを調べるのみならず、あらゆるスケール、物的存在すべてを貫く法則を求めている。つまり、この世界を支配する根本の原理、究極の「物の理(ことわり)」を探求している。しかし、そもそも、原子よりも小さなミクロの世界や銀河宇宙レベルのマクロの世界は、私たちの身近な世界と地続きではあっても、日常レベルでは経験できないものである。明らかにわれわれにとってはみちの世界であり、直観で理解することは困難である。


そのため、素粒子論をはじめとする現代物理学は、高度な数学を駆使して構築されている。この大前提となっているのが、「この世界はきわめて論理一貫したものである」という思想である。つまり、この世界はすべて論理的、合理的にできているという理解である。その論理を表現するのに必要な言語が数学である。数学を用いて論理を積み重ねることで、人間の直観や常識が働かない未知の世界を描き出すことができるのだと佐藤は言う。