アインシュタインの一般相対性理論をざっくりと理解してみる

前回の記事で、特殊相対性理論のざっくりとした理解を試みた。今度は、一般相対性理論をざっくりと理解できるかどうか試してみる。
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しかし、特殊相対性理論で扱う数学(例、ローレンツ変換ミンコフスキー空間)は数学のレベルとしては比較的平易だと言われているのに対して、山田(2017)によれば、一般相対性理論で用いる数学(例、リーマン幾何学や計量テンソル)は、大学の教養課程でも扱われることが少なく素人には手に負えない難解なものであるため、より直感的な理解とならざるを得ない。


そもそも、一般相対性理論は「物理法則はどんな観測者から観測されてもその数式の形はまったく同じである」という物理学の原則を守りつつ、「物理法則が慣性座標系に依存しない」特殊相対性理論を一般化可能な形に拡張したものである。つまり、慣性系しか扱えない特殊相対性理論が「特殊ケース」となるように拡張された相対性理論ということであり、加速や減速しているような座標系でも扱えるようにしたものである。山田によれば、そのような一般相対性理論の本質をズバリ一言でいうならば、「一般相対性理論は重力理論そのものであり、時空のゆがみが重力をもたらすという理論」である。なんと、特殊相対性理論では、重力を全く扱っていないのである。


では、一般相対性理論が説く重力とは何かというと、それはニュートン力学でいうところの引力(引っ張る力)ではない。遠く離れた物体同士が瞬時に引き合うような遠隔力ではないということである。その根拠となるのが「等価原理」であり、これは、ざっくりというと「慣性力」と「重力」とが全く同じということである。だから、無重力の空間で加速されている座標系で起こる現象は、重力がある座標系で起こる現象と全く同じなのである。重力のある座標系で自由落下している物体の内部は無重力になる。つまり、重力と呼ばれるものは簡単に消したりできる。よって、繰り返すと、引っ張る力という意味での重力は存在しないということだ。


では改めて重力の正体は何かというと、「重力とは時空のゆがみに他ならない」というのが一般相対性理論からの答えである。ではなぜ時空がゆがむかというと、それは物体に質量があるからである。ただし、なぜ質量が時空をゆがめるかはよくわかっていないと山田はいう。ざっくりというと、ゆがんだ時空を物体はまっすぐに進む。その結果、物体の軌道は曲がる。それが、地球上であれば、物事が落下するという現象になる。物理学者ホイーラーの表現を借りれば、「時空は物体にいかに動くべきかを教え、物体は時空にいかに曲がるかを教える」ということなのである。


上記の「物体がまっすぐ進む」というような表現は分かりにくいかもしれない。そもそも相対性理論では、空間と時間は切り離すことができず、時空という4次元空間で考える。そのうち、時間軸は、他の空間3軸と対応させるために、距離の尺度に変換しないといけない。その際には、1秒=30万キロという、相対性理論で不変だと仮定される光速の式が用いられる。つまり、4次元時空の時間軸では、1秒=30万キロである。なので、空間上は静止しているように見える物体でも、1秒間に時間軸を30万キロ移動している。これを指して、進んでいると解釈する。


例えば、架空の話だが、地球上で地上1メートルからリンゴを落として1秒で地面に落ちたとする。ニュートン力学だと、小さな質量のリンゴが圧倒的に質量の大きい地球に引っ張られて落下したと解釈する。しかし、引力を想定しない一般相対性理論ではそうは考えない。一般相対性理論によれば、地球もリンゴも、4次元の時空をほぼまっすぐに進む。実際にはリンゴと地球は1秒後に衝突しているが、時空上では、30万キロ(地球7周半分)と1メートルの比なので、地球もリンゴもほぼ直線的な移動といってよいだろう。地球もリンゴも、自らは「まっすぐに」動いている。しかし、地球の方が質量が大きいので、地球のそばの時空が若干「ゆがむ(曲がる)」。リンゴは、ゆがんだ時空に沿ってまっすぐに進む。その結果、30万キロの時間軸を進んでいる間に、空間軸でたった1メートルだけ軌道がずれる。それが地球との衝突という帰結をもたらすわけである。


数学的には、時空のゆがみをリーマン幾何学や計量テンソルなどで表現するのであるが、これを特殊相対性理論の数学に加えることで、一般相対性理論ができあがったわけである。慣性系では重力がなく、よって時空のゆがみがないので、その場合には、一般相対性理論の式は特殊相対性理論と同一の形になるのである。また、重力の正体は時空のゆがみであることから、それは重力場と解釈され、時空のゆがみ、振動が重力波となって光速で伝わるという理論につながった。重力は遠隔の物体に瞬時に働くのではなく、時空のゆがみを示す重力波はあくまで有限のスピード(光速)で伝わっていき、遠く離れた物体はその影響を受けるわけである。